坂口恭平のプロフィール

1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
在学中から、大規模な現代建築を設計する建築家に疑問を持ち、
人が本来生きるための建築とは何かを模索し続けている。
路上生活者の住居を、都市の中の天然素材で作られた建築と捉え、
フィールドワークを行っている。
著書にカリスマホームレスの一人である隅田川の鈴木さんの生活を追った、
ノンフィクション「TOKYO 0円ハウス 0円生活」、
彼をモデルにした小説「隅田川のエジソン」がある。
現在「TOKYO 一坪遺産」が好評発売中。

WEB・書籍情報:http://www.0yenhouse.com/

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Q11.不景気になり、ボーナスが出なくなり、給料も下がりました。今では妻からもらう小遣いが一日500円です。こんな状態じゃ飲みにもいけません。一体どうしたらいいんでしょうか?(32歳・サラリーマン・男性)

人生で一度も働いたことがない聖人「佐藤輝雄さん」

佐藤輝雄です。
58歳です。
新宿でホームレスをやっています。
私はブルーシート小屋も持っていませんので、
正真正銘、本物のホームレスです。
今回は私が答えます。

小遣いが一日500円。
私とまったく一緒じゃないですか。
私の場合は、小遣いといいますか、稼ぎのすべてなんですがね(笑)。
私は、28歳の時から、ホームレスをやっています。
だからもう30年になります。
今まで、働いたことはありません。
それでも生きていけるんです。
今回は私の方法を教えましょう。
少しはあなたの不安も軽くなるかもしれません。

私がどうやって一日500円を稼いでいるか。
簡単なことです。
落ちているお金を拾っているんです。
主に、自動販売機の釣り銭口から獲得しています。
そんなの見つかるわけない、と思われるかもしれませんが、
不思議なことに、毎日必ず500円、ちゃんと落ちています。
だから、偶然見つけているのではありません。
新宿には、毎日500円、木の実がなるように湧き出てくるんです。
私は、これを自然の恵みと思っています。
まあ、毎日いろんなところを歩き回らないといけませんがね。

でも、500円じゃ、飯代にもならないだろうと思うでしょう?
しかし、私はその500円で食事するのではありません。
では、どうやって食事を獲得しているか。

炊き出しにいっているわけでもありません。
むしろ炊き出しは苦手です。
だって、あんまり美味しくないですから。
じゃあ、何を食べているのか、疑問に思う方も多いでしょう。

そこでさっき私が言った言葉を思い出してみてください。
新宿には自然の恵みがある、と。
山の幸、海の幸というように、
新宿にも幸があるのです。
それを私は「都市の幸」と呼んでいます。
毎日、湧き出てくる都市の幸を食べ、
私は生活しているのです。

具体的に説明しましょう。
まず、私の一番の好物は、たこ焼きです。
しかも、ただのたこ焼きではありません。
「某有名チェーン」のたこ焼きです。
毎日、夜の11時半から12時までの間、
そのチェーン店から、売れ残りのたこ焼きが一斉に捨てられます。
それを頂くんです。
もちろん、冷えてます。
まずいとお思いでしょう。

ところが、です。これがうまい。
そこのたこ焼きには、生地にしっかりと下味がついているんです。
このため、どんなに冷えていても、ソースがかかっていなくても、
味がしっかりとしていて、美味しいのです。
しかも、毎日大量に湧き出てくる。
一度食べたら、病みつきになってしまいます。
このチェーンが繁盛するわけです。

あと、私は寿司が大好きです。
もともと生まれが北海道の小樽ですので、
魚介類が大好きなんです。
しかし、寿司なんて高くて食えない。
もちろん、あなたたちはそう考えるでしょう。
ところが、寿司も新宿では「都市の幸」です。
どこで手に入れるか。
それは回転寿司です。
そして、みなさんご存じの通り、
回転寿司は注文されて握るわけではないので、
誰にも取ってもらえなかった寿司が
大量に廃棄されることになります。
これも、毎日深夜12時を超えると、まとめて出されます。
こちらは、生ものなので、すぐ食べる。
私たちには、「三食」という概念がありません。
ある時に、溜め食いをするんです。

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