坂口恭平のプロフィール

1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
在学中から、大規模な現代建築を設計する建築家に疑問を持ち、
人が本来生きるための建築とは何かを模索し続けている。
路上生活者の住居を、都市の中の天然素材で作られた建築と捉え、
フィールドワークを行っている。
著書にカリスマホームレスの一人である隅田川の鈴木さんの生活を追った、
ノンフィクション「TOKYO 0円ハウス 0円生活」、
彼をモデルにした小説「隅田川のエジソン」がある。
現在「TOKYO 一坪遺産」が好評発売中。

WEB・書籍情報:http://www.0yenhouse.com/

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Q12.リーマンショック以降、これからの経済について不安になっています。これからもっと世界経済がもっとひどくなっていくと、世界はどうなってしまうのでしょうか。お金を稼ぐよりも、どうやったら生きのびられるのかということを考えていく必要があると思っているのですが、方法がわかりません。教えてください。(25歳 OL 女性)

東京で唯一の水上生活者「長野さん」

はじめまして、東京でただひとり、
水上生活者をしております長野です。
今回はオレが答えるね。
あなたの経済に対する不安、共感できるよ。
なぜって、
オレはそのことをずっと考えながら生きてきたから。
経済の問題というのは
貨幣が生まれてからずっとあるの。
リーマンショックなんて関係ないんだ。
人間はちゃんとそのことを考えないといけない。
だから、今は本当にいい時だと思うよ。
そして、これからどうやって生きるかが、本当に鍵になる。
オレのやり方を説明するよ。

水上生活をし始めてから、もう10年になるんだけど、
これもオレの経済に対する考え方を具現化したものなの。
つまり、家や土地というものの値段が変動していくことに
どうやって対処していくかということ。
マンションを売って金を稼ぎたい連中は、
「今のうちに買っておかないと」
と人々を焦らせて商売をしている。

でも、物の値段なんて適当にもほどがある。
3000万円で買ったものが、
すぐに1000万円になったりするんだから。
土地が高くなれば、すぐに立ち退かされるし、
結局人間は、そんな場所で生きているってことなんだよ。
それは馬鹿らしい。
どんな状況にも、屈しない生活とは何なのか、とオレは考えたね。
元々、船の整備士をやっていたから、
オレには、地上と水上という二つの世界が見えていた。

そうすると、土地に対する人々のとらえかたは
ほとんど貨幣と同じような成り立ちをしていることがわかったわけ。
人に信じ込ませて、そこに価値があると思わせる。
信用だけで成り立っている世界なんだ。
そんなもの地震でも起きたら、一変してしまうわけよ。
人は紙切れを一万円と信じて、溜め込んでいるけど、
信用がなくなってしまったら、それはケツを拭くための
紙切れになってしまう。
変動するものとは付き合わない。

水上というのは地上の理屈とは違って、
たとえ天変地異が起きても、そう大きな変化が起きない。
もちろん、ほとんどの人間にとってはそこは住むところではないのだから、
誰も注目はしないしね。
だから、オレは持っている船に住み始めた。
ところが、途中から停泊しているだけでお金を取られるようになってきた。
だけど、もともとはお金を払う必要はなかったんだから、
オレはそれには従わず、お金を払わないでいた。
そしたら東京都は、船を無断で撤去し始めた。

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