坂口恭平のプロフィール

1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
在学中から、大規模な現代建築を設計する建築家に疑問を持ち、
人が本来生きるための建築とは何かを模索し続けている。
路上生活者の住居を、都市の中の天然素材で作られた建築と捉え、
フィールドワークを行っている。
著書にカリスマホームレスの一人である隅田川の鈴木さんの生活を追った、
ノンフィクション「TOKYO 0円ハウス 0円生活」、
彼をモデルにした小説「隅田川のエジソン」がある。
現在「TOKYO 一坪遺産」が好評発売中。

WEB・書籍情報:http://www.0yenhouse.com/

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Q14.仕事が忙しくて休みもなく、会社と自宅を往復する毎日です。仕事をしているだけでは生きている意味がないように思い、もっと趣味や楽しみの時間が持てる仕事に転職しようかとも考えています。ホームレスの人たちは趣味や楽しみはあるんですか?生きている意味ってあるんですか?(27歳 OL 女性)

「長明さん」

おひさしぶりです。長明です。
生きている意味ですか。
仕事に追われ、そんなことを考えてしまう状況、
私にもわかります。

なんてったって、
私はその昔、
コンピューター開発会社の社長をやっていたもので。
仕事とは一体なんなのか?
それが生きていることとどう結びついているのか?
考えたことがないといったら、嘘になります。

現代社会において、
仕事が生きていることと直結しなくなっていることは、
とても大きな問題だと思います。
それが分離してしまっているから、
考えてしまうのです。
その経験が私にもあるから、
現在、多摩川でのロビンソンクルーソー生活は、
とても充実したものに感じられるのです。
私は特にこれといって趣味や楽しみを持っているわけではありません。

趣味や楽しみがないのに毎日が充実しているのは、
仕事と趣味という区別をしていないからです。
私の今の生活にとって、
すべての活動が仕事であり、趣味であると言えるのかもしれません。
それは、私がこれまで生きてきて感じた疑問を
よく見つめて、
自分が考える、人間の生活というものを
実践しようという試みでもあります。
私はゴミ置き場に捨てられているさまざまな金属を拾ってきて、
それを分別して業者に売ることで生計を立てています。
それはもちろん仕事ではありますが、
私はさまざまな金属製の道具と接するのが好きなのです。

さらに、ゴミという現代社会にあふれる余剰物について、
批判的な思いもあります。
どれも実際はゴミなどではなく、
簡単に転用できるし、リサイクルできるし、
換金だってできます。
そういうゴミを生み出す社会に対して、
私なりの思想を訴える手段としても、
この仕事は重要です。

つまり、私の仕事は単に収入を得るための仕事ではなく、
楽しみであり、私の思想でもあるのです。
このように、人間の仕事とは、
「仕事とそれ以外の楽しみ」のように、わけられるものではなく、
すべての思いが混在しているものなのだと思います。
そこに、あなたたちが毎日行っている仕事の問題点があるのではないでしょうか。

●小学館オンライン ⁄ ブックピープル
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