坂口恭平のプロフィール

1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
在学中から、大規模な現代建築を設計する建築家に疑問を持ち、
人が本来生きるための建築とは何かを模索し続けている。
路上生活者の住居を、都市の中の天然素材で作られた建築と捉え、
フィールドワークを行っている。
著書にカリスマホームレスの一人である隅田川の鈴木さんの生活を追った、
ノンフィクション「TOKYO 0円ハウス 0円生活」、
彼をモデルにした小説「隅田川のエジソン」がある。
現在「TOKYO 一坪遺産」が好評発売中。

WEB・書籍情報:http://www.0yenhouse.com/

質問はこちら

Q15.おじさんの夢はなんですか?(17歳 高校生 男性)

なぜ、人間は家を手に入れることに、こうも人生をかけなければならないのか。
私はそのことに、疑問を呈したいんです。
今、みんなが手に入れているのは、人間の家、生活ではないだろう、と。
そのことについてもっと考えていかないと、
大変なことになるんじゃないか。
私はそのことをいつも心配しています。

買わなければならないものが増えていくばかりで、
人間の息吹が感じられるような、
豊かな空間が失われていっている。
人間が生活していくための基盤として、
簡単に手に入れられる安心の空間、
本来、家というのはそういうものであるはずです。
そこを今の人たちは、忘れているのではないか。
それは生きているということを、忘れているといっても過言ではない。

私は、今から12年前、福島から仕事を探すために上京してきて、
酔っぱらって財布を盗まれてしまい、無一文になり、
路上生活を始めました。
もちろん、始めは絶望しましたよ。
でも、すぐにそれは解消されました。
一人の師匠に会ったからです。
師匠の名前はモチヅキさん。
彼は路上生活の達人で、困っている私に、
コンビニ弁当をたくさん拾ってきてくれてこう言いました。
「路上にようこそ。ここは天国だよ。何も困ることはない」
そう言って、彼はゴミの拾い方、お金の稼ぎ方、家の建て方など、
いろんなことを教えてくれました。
そこには、現代社会が忘れてしまっている、
人間と人間の濃い結びつきが残っていました。

それによって、私は希望を感じ、
むしろ生命力は以前よりも強くなって、
活き活きと生き抜くことができたんです。
それから、モチヅキさんの教えを応用して、
自分なりに工夫して、
生きる技術を高めていきました。
それは今までに体験したことのない、エキサイティングな日々でした。
これこそ、生きるということなのではないか、と私は興奮さえしました。

ゴミ置き場に落ちているものだけを拾って、
釘一本買うことなく、
家も建てました。
この家は日本の伝統的な工法を応用したもので、
夏は涼しく、冬は暖かい、居心地の良い空間です。
これまで住んできたどの家よりも好きなんです。
しかも、0円なんですから。
自分の頭で考えて、独力で生きる日々は、
もちろん大変なこともありましたが、
とても充実して、
人間の根源的な営みに思えました。
私は初めて自分だけの生活を手にしたのではないかと思ったほどです。

●小学館オンライン ⁄ ブックピープル
©Shogakukan Inc,2009 All right reserved.
No reproduction or republication without written permission.
掲載の記事・写真・イラスト等のすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。