坂口恭平のプロフィール

1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
在学中から、大規模な現代建築を設計する建築家に疑問を持ち、
人が本来生きるための建築とは何かを模索し続けている。
路上生活者の住居を、都市の中の天然素材で作られた建築と捉え、
フィールドワークを行っている。
著書にカリスマホームレスの一人である隅田川の鈴木さんの生活を追った、
ノンフィクション「TOKYO 0円ハウス 0円生活」、
彼をモデルにした小説「隅田川のエジソン」がある。
現在「TOKYO 一坪遺産」が好評発売中。

WEB・書籍情報:http://www.0yenhouse.com/

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Q1.無職・無一文なんですけど、ぶっちゃけ、やばいですか?(28歳・男)

0円生活の達人「鈴木さん」

今回は私が担当します。鈴木です。はじめまして。
28歳で無職・無一文ですか。
あなたぐらいの年齢であれば、
まだまだ探せば仕事はいくらでもあると思いますが、
とにかく今そういう状態ならば、
なんとか手を打たなくてはいけません。
そんなあなたを見ていると、
つい昔の自分を思い出してしまいます。

今から十二年前。
働いていた福島の建設会社が潰れてしまい、
仕事を求めて浅草にやってきました。
手元には40万円。
山谷に行けば、仕事はいつでもあったし、
自慢じゃありませんが、私は腕がよかった。
私は安心しきって、毎晩仕事もせずに飲み歩いていました。

そんなある日、
ちょっと飲み過ぎてしまい、
そのまま浅草の公園で寝てしまったのですが、
朝、気が付くと、
ポケットに入っていた財布と、
かばんが無くなっていたんです。
かばんの中には建築現場で働くための道具や作業着まで入っていた。
働こうにも商売道具が無い。
泊まっていた旅館は出なくちゃいけない。
いつでも働けると余裕だった私は、
突然、無職・無一文となり、路上に放り出されてしまったのです。
そうなると、手も足も出ない。
その時、人は思考停止状態になってしまうんです。
それはそれは悲しく、絶望的でした。
しかし、とにかく一日は過ぎていく。
どん底の私は、それでも寝床は確保しなくてはと、
ダンボールを数枚拾って、
浅草の言問橋の下に向かいました。

こんなに不安な日々がこれから続くと思ったら、
思わず泣き出しそうだったんですが、
ここから、話はおかしな方向に進んでいくんです。

橋の下で寝始めてから数日たったある日、
そこに一人の男性がやってきた。
すると、周りの人間がみんな、
「ウジイエさ〜ん」と言って近寄っていく。
何が起きるんだろうと見ていると、
ウジイエさんの手には無数のコンビニ弁当が。
それを配っているではありませんか。
私のところにまで弁当は回ってきました。
そして、彼はニコニコ顔でこう言ったのです。
「路上で手に入らないものはない。
木の実をさがすように街を歩け」

その日から、ウジイエさんは私の師匠となり、
コンビニ弁当の入手方法、
使用済みのテレホンカードで稼ぐ方法、
身分証明書が無くても、拾ったものを買い取ってくれる古道具屋、
なぜか60円でワンカップ大関が買える自動販売機、
何でも格安で売っている秘密の朝市など、
あらゆる情報を教えてくれたのです。
路上は何もない不毛の地ではなく、
一生飯には困らないほど資源豊かで、
稼ぎを得る可能性に満ちているところだったのです。

それ以来、私は完全なる0円生活を送っています。
だから今回は、私がその秘密を公開しちゃいます。
それを聞けば、やばいどころか、
たぶん、やめられなくなっちゃうと思うよ。

●小学館オンライン ⁄ ブックピープル
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