坂口恭平のプロフィール

1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
在学中から、大規模な現代建築を設計する建築家に疑問を持ち、
人が本来生きるための建築とは何かを模索し続けている。
路上生活者の住居を、都市の中の天然素材で作られた建築と捉え、
フィールドワークを行っている。
著書にカリスマホームレスの一人である隅田川の鈴木さんの生活を追った、
ノンフィクション「TOKYO 0円ハウス 0円生活」、
彼をモデルにした小説「隅田川のエジソン」がある。
現在「TOKYO 一坪遺産」が好評発売中。

WEB・書籍情報:http://www.0yenhouse.com/

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Q2.新卒で就職したばかりです。気が弱くて悩んでいます。人見知りするのではじめての人に会ったり、営業の電話をするのも苦手です。いやなことはつい先延ばしにしてしまうので、いつも悪い結果になります。でも、上司に怒られるのがわかっていても、苦手な仕事にとりかかろうとするとドキドキしてしまってできないんです。このままだと会社をクビになってしまうかもしれません。どうしたらいいのでしょう。(23歳・男・会社員)

0円生活の達人「鈴木さん」

隅田川生活10年目の鈴木です。今回も私が担当します。
こうやって今では路上でも堂々と生きている私も、
若い頃は人見知りが激しくてね。
内弁慶だったんですよ。
だから、あなたの悩みもよくわかります。
でも、強くなるしかないんです。人間は。

私は22歳で結婚しました。その時、嫁は17歳。
ある化学メーカーの倉庫を管理する仕事をしていました。
あなたの場合もそうやって、養わなくてはいけない
家族がいたほうがいいかもしれませんね。
自分に責任を持たせる。
これが自分に自信をつけるためには、一番効果がある。
まあその結婚は4年半で駄目になっちゃったんだけどね。
それ以来、結婚はしてません。

でも、路上に暮らし始めてから、
ミーコという7歳年下の同居人がずっといるんですよ。
困ったことに。
恋人ならいいんですが、
このミーコがまったく私とは寝てくれないんです。
ただの居候なんです。
でも、ともかくそういう人間がいるから、
養っていかなくてはと、
今の仕事であるアルミ缶拾いにも自然と熱が入るんです。
私は、路上生活をやっておりますが、
死んでたまるか、なにくそ、と気合い入れて生きています。
ですから、昨日も役所の方が、月に一度の一時撤去のお知らせに
来てくれましたが、「鈴木さん、いつもすいません」って、
頭を下げてお願いしてくれるんです。
どんなにドン底に陥ったとしても、そこで十年以上も生き延びれば、
行政の対応すら変わっちゃうんです。
これは自分にとって、大きな自信になりますよ。

重要なことは、
「違うと思ったら、どんどん自分を変える」
ということ。
自分にこだわらないことが、
良い方向に自分を向かわせる一番の方法なんです。
だから、周りの意見にしっかりと耳を傾ける。
「あなたはコレが得意だね」
なんて、言われたら即信じてやってみる。
向いていることをやっている人間は、
仕事に対して積極性があるから、
どんどんうまくいく。
逆に「あなたにこの仕事は向いていないね」
なんて言われたり、自分でも向いていないと
感じるのだったら違うことを探したほうがいいでしょう。
まあ、もちろん、
あなたの今の仕事も自分で選んだのだから、
少しはやってみないとね。
路上でも、私はとりあえず、
半年から一年ぐらいは同じことをやって試しているよ。

私はいまだに人見知りですけど、
建築現場をずっと渡り歩いてきて、
人をたくさん見てきたんで、
人間を見定めできるようになっていたのよ。
人見知りをする人っていうのは、自分と相性の悪い人と
うっかり関わりあいになってしまい、
それをイヤな記憶として残してしまうので、
次に新しい人と関わる時に臆してしまうんですね。
だから、相手がどんな人間か見定めることができれば、
人見知りのままでも対人関係でイヤな思いをすることは
少なくなります。

というように、
自分の欠点である人見知りで悩むのではなく、
それと全く違う、自分にできる能力を身につければ、
欠点はその力によって克服できるんです。

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