坂口恭平のプロフィール

1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
在学中から、大規模な現代建築を設計する建築家に疑問を持ち、
人が本来生きるための建築とは何かを模索し続けている。
路上生活者の住居を、都市の中の天然素材で作られた建築と捉え、
フィールドワークを行っている。
著書にカリスマホームレスの一人である隅田川の鈴木さんの生活を追った、
ノンフィクション「TOKYO 0円ハウス 0円生活」、
彼をモデルにした小説「隅田川のエジソン」がある。
現在「TOKYO 一坪遺産」が好評発売中。

WEB・書籍情報:http://www.0yenhouse.com/

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Q5.休耕田をただで貸してくれるところが、今は田舎に行けばいくらでもある。そこで大手をふって自給自足をすればいいじゃないか!(52歳 経営者)

「長明さん」

今回も多摩川在住15年の長明が担当します。
何も東京のど真ん中の河川敷で自給自足をしなくたって、
休耕田をただで貸してくれるところなんて
今ではどこにでもあるわけだから、
そこに行ってやればいいとのご意見ですね。
ごもっともだと思います。
私もそれでできないかと考えたことはありました。


私は東京という土地でそれをできているわけですから、
田舎へ行ってやるのはとても簡単に見えるかもしれません。
まして、私は東京では路上生活者。
田舎に行けば、ただで田畑や家を貸してくれるところもある。
そちらへ行けば、私も都合が良さそうです。
ですが、そこがなかなか難しい。
私には大都市の中でこの生活をしている意味があるのです。

人が田舎で自給的な暮らしをする際に、問題点が3つあります。

  1. 現金収入をどうするか。
  2. 運転免許証をどうするか。
  3. 田舎が求めている人材とはどんなものか。

この3点についてお話したいと思います。

まず、何が一番の問題かと言うと、
やはり現金収入です。
私は、現在、路上に落ちている非鉄金属、
つまりアルミニウムや銅などを採集し、
いくばくかの現金を得ています。
それらが何もない田舎ではできない。
私が現在、現金を得ている仕事は
やはり都市という場所での、独特な生業なのです。

せっかく田んぼがあるんだから、
それだけで生計を立てればいいじゃないかとおっしゃるかもしれません。
私の家族は、田んぼや畑で自給自足のような生活をしていたからわかるのですが、
一人の人間が、田畑だけで日々の食事をまかない
現金収入を得ようと思ったら、
現在では最低でも三反分、つまり900坪の土地が必要です。
さすがに、そこまでただで貸してくれるところは、なかなかないでしょう。
しかも、私は今68歳。
年齢的に見ても、田畑だけで現金収入を得る肉体労働には耐えられません。

ですから、農業のほかに
手っ取り早く現金を得る方法を考えなくてはいけません。
しかし、農作物の生産・販売や、田舎にある「まっとうな」仕事で
現金収入を得るために絶対必要なものを私は持っていないのです。
「運転免許証」です。

都市では車なんていらないですけど、
地方ではそうはいかないのです。
車がないと、作った作物を売りに行くこともできません。
こまごまとした仕事をこなしに行くこともできません。
免許証がない、これが二つめの大きな問題です。

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