坂口恭平のプロフィール

1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
在学中から、大規模な現代建築を設計する建築家に疑問を持ち、
人が本来生きるための建築とは何かを模索し続けている。
路上生活者の住居を、都市の中の天然素材で作られた建築と捉え、
フィールドワークを行っている。
著書にカリスマホームレスの一人である隅田川の鈴木さんの生活を追った、
ノンフィクション「TOKYO 0円ハウス 0円生活」、
彼をモデルにした小説「隅田川のエジソン」がある。
現在「TOKYO 一坪遺産」が好評発売中。

WEB・書籍情報:http://www.0yenhouse.com/

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Q6.夢ってなんなんですか?成人式でもやたら「夢」って言葉を聞いたけど、なんだか腹が立ちます。家を買うとか、出世するとかも興味がないし、金もそんなにいらないし。「夢」なんて思いつかないんですけど。(20歳 新成人)

「長明さん」

はい、こちら長明です。今回も私が担当します。
まずは、成人式おめでとうございます。
これであなたも立派な大人ですね。
あなたしかできないことを成し遂げてほしいと思います。
しかし、「夢」がないんですね。

私はと言うと、
私もあなたと同様に夢はないかもしれません。
夢っていうことは、将来について何かを考えているってことになりますが、
将来設計は私も何一つ考えていません。
考えていることはただ、
幸せな一生を送る、ということだけです。
将来に対しては、何一つ展望を持っていませんが、
私は、今、とても幸せです。
これまでの人生で一番幸せだといっても過言ではありません。
苦労が全くないんです。

もちろん、天災、収入、健康など心配事はあるにはあります。
でも今は、自分に必要なもののほとんどを、
店で買うのではなく自分の手で手に入れ、
生き物を育て、野菜を収穫し、好きな本を読むことに満足しています。
なにより、自分の力で生活を作りあげている、
そのこと自体に満足しています。
欲しいものなんて何もありません。
そういう意味で夢がないのです。

あなたについて考えてみると、
あなた自身も、さまざまな欲がないようで、
つまり、今のあなたに満足しているのではないでしょうか。
そんなときには、夢がないのが当然です。
むしろ夢なんてどうでもいいと思います。
それよりも、自分がやるべきことを見つけることのほうが大事です。
夢という先にあるものを追い求めるのではなく、
まさに今、「夢中」になるものを見つけてみてはいかがでしょうか。
夢を見るのではなく、夢の中にいられるわけですから。
私も、今、金銭的な意味で、とにかく夢中ですよ(笑)。
どうやって現金収入を得るかを、よく考えています。
夢中になるのは素晴らしいことです。

将来、医者になるとか、世界一周をするといった夢を持つことも、
もちろんとてもいいことだとは思いますが、
それよりも、自分が好きなことを、身近なことでかなえる。
それこそが、人にとって生きがいになってきます。
なんでもいいから、そのへんに転がっているものに手をかけてみる。
手近、身近なものに目を向けてみる。
それこそが、実は自分にしか見つけられない、
生きがいになったりするものです。

私が20歳の時は、船乗りになって七つの海を駆け回りたいという、
夢を持っていました。
それで学校へ行き、本当に船乗りになりました。
世界中を旅したものです。
それはもちろん楽しい日々だったのですが、
私は筋金入りの飽きっぽい性格で、
一年間、しっかりと働いて、
すぐ辞めてしまいました。
夢なんてそんなものです。

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