坂口恭平のプロフィール

1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
在学中から、大規模な現代建築を設計する建築家に疑問を持ち、
人が本来生きるための建築とは何かを模索し続けている。
路上生活者の住居を、都市の中の天然素材で作られた建築と捉え、
フィールドワークを行っている。
著書にカリスマホームレスの一人である隅田川の鈴木さんの生活を追った、
ノンフィクション「TOKYO 0円ハウス 0円生活」、
彼をモデルにした小説「隅田川のエジソン」がある。
現在「TOKYO 一坪遺産」が好評発売中。

WEB・書籍情報:http://www.0yenhouse.com/

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Q7.佐藤さんは、売れ残った食材などを集めて調理されているそうですが、今までにどんなものが捨てられていましたか? びっくりするようなものがあったら教えてください。(36歳 男 小学校教員)

「佐藤さん」

はじめまして、佐藤です。
私は10年もの間、
新宿中央公園に小屋を作って暮らしています。
私がやっている仕事は何かというと、
「賄い夫」です。
こんな言葉、
今の子供たちは聞いたこともないでしょうが、
つまりは、周辺に暮らす仲間のために賄い(食事)を作っています。
それが仕事なんです。

新宿中央公園には昔、たくさんの路上生活者たちが、
家を造って暮らしていたんですが、
ほとんどの人々が福祉施設へ行き、
今では、10軒ほどしか建っていません。
施設へ行けば、住むところも食べるものも保証されます。
ところが、遊んだり、酒を飲んだり、煙草を吸ったりする
自由が無くなってしまいます。
私はそれは嫌だから、ささやかに、この地で暮らすことにしました。

私の回りで暮らしている路上生活者たちは、
皆アルミ缶を拾う仕事をしています。
それはかなり重労働で、しかも毎日、朝早くから始めないといけません。
ゆっくり御飯を作ったりしている暇はありません。
そこで、私が彼らの食事を代わりに作ることにしたのです。
今は、四人の路上生活者の3食分を面倒みています。
一人から月に5000円ほどもらっています。
それで、彼らは毎日、美味しい食事が食べられるわけです。
ほかにも洗濯なんかもしてあげます。
それが私の仕事なんです。

でも、一人5000円で一か月分の食事を作るのは容易なことではありません。
もちろん、安いカップラーメンばかり買えば、可能ですが、
それでは健康的な生活は送れません。
また、食事に飽きられたら、
賄い夫は顧客を失ってしまいます。
そんなわけで、私の作る食事は、
一週間単位で、毎日献立が変わります。
使う食材も、レトルトはほとんどありません。
ちゃんと肉、魚、野菜をバランスよく取り入れ、
飽きず、健康にも良い食事を作ることを心がけています。

それでは、一人5000円、一食あたり約60円で
どのようにして、良質の食材を獲得しているのか。
答えは簡単です。
私は、ほとんどの食材を買わない。
すべて、新宿という都会で余った食材を使っているのです。
そんなことが可能なのかと驚かれるかもしれませんが、
現代の人間は恐ろしいほど、ものを捨てています。
もらっている私が、怒りの感情を持ってしまうほど捨てています。
今回は、私がどんなものを拾い集めているかをお教えしましょう。
それが、あなたたちの何でも捨てるやり方を改めるきっかけになれば幸いです。
もちろん、それだと私が困るのですが(笑)。

そして同時に、もしも仕事も金も無くなって、
餓死してしまいそうになった時も、私の話を思い出してください。
どんな状態であっても、生き延びることができるのだと実感できることでしょう。
さあ、話を進めましょう。

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