坂口恭平のプロフィール

1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
在学中から、大規模な現代建築を設計する建築家に疑問を持ち、
人が本来生きるための建築とは何かを模索し続けている。
路上生活者の住居を、都市の中の天然素材で作られた建築と捉え、
フィールドワークを行っている。
著書にカリスマホームレスの一人である隅田川の鈴木さんの生活を追った、
ノンフィクション「TOKYO 0円ハウス 0円生活」、
彼をモデルにした小説「隅田川のエジソン」がある。
現在「TOKYO 一坪遺産」が好評発売中。

WEB・書籍情報:http://www.0yenhouse.com/

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Q8.友人が自殺してしまいました。ホームレスの方々は死にたくなることはないんでしょうか?(31歳・自営業・男)

「佐藤さん」

はい、佐藤です。
自殺ねえ。
自殺する人は根性がないんだよ。
一回しかない人生ですよ。
いろんな楽しみがあるのにね。もったいない。

私だって、事業に失敗して
信じられないくらいの借金を抱えてしまったこともあります。
でも、死のうなんて思わなかったけどね。
おかげで、この公園に身を潜めて暮らすことになっちゃったけど、
この生活も悪いことばかりでもないんですよ。
わざわざ私の家まで野菜を持ってきてくれる人もいます。
ニンジンやサツマイモを箱に入れて持ってきてくれるんです。
しかも、顔を見たことがない。
ただ置いていってくれるんです。
そんなのを見たら、死ねません。
さあ、今日も頑張るか、って思うんです。

私が新宿に暮らし始めてから、
まわりで自殺した人は見たことがありません。
ここには希望なんて、かけらもないけれど、
絶望もないんです。
じゃあ、なにがあるかっていうと…ここには友達がいます。
やっぱり友達が一番大事ですよ。
命がある以上は、人と語り合わないといけないと、私は思ってます。
それで、気の合う人、合わない人ってできちゃうけど、
それでもいいんじゃないですか。
とにかく語るんです。
あとのことは考えない。
もちろん人間ってのは、話せばわかりあえるわけではありません。
逆に問題が出てきて、失望する時もあります。
人間というのは分裂しているものなんです。
語ることでみんなを一つにまとめるなんてことはできません。
むしろ他人と考え方が異なるということを感じることが重要なんです。
それこそが語ることの意味なんです。
そこに社会性がうまれるんです。

語り合って、友達ができれば、
誰かに裏切られたって、平気でいられるれるかもしれない。
語り合って、考え方が異なる人がたくさんいることを知れば、
裏切った奴を許すことができるかもしれない。
自殺を考える前に、誰とでもいいから語り合えばいいんだよ。

私たちは、つまりはあなたたちが捨てたゴミを拾って生活しているんですが、
それを見ていてよく思うことがあります。
あなたたち、ものを捨て過ぎですよ。
本当に何でもかんでも捨ててしまう。
昔はつぎはぎだらけの服を着ていたものです。
今では、洋服でも布団でも新品なのに捨てちゃうからね。
おかしいよ。
おかげで、私たちはイイものを獲得できるんだけどね。

簡単にものを捨ててしまう、ものに愛着を持たないってことは、
簡単に命を捨ててしまうってことにつながるんじゃないかって、
思いますね。
なんかいつも複雑な気持ちですよ。

●小学館オンライン ⁄ ブックピープル
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