去る11月23日(木・祝)、都内某所にて「検証! アベノミクス」と題するシンポジウムを企画・開催しました。
 登壇者は、竹中平蔵氏(東洋大学教授)、西村康稔氏(自民党衆議院議員・内閣官房副長官)、吉野直行氏(慶應義塾大学名誉教授)の3氏で、司会は白井が務め、議論を進行しました。
 このシンポジウムでは、今後の日本経済のゆくえを占うにあたりとても有意義な議論が展開されましたので、本連載において2回に分けて、その主な内容についてご紹介していきます。

 今回は、シンポジウムの大きなテーマのひとつとなった、「財政再建は必要か、必要でないか」についてです。

専門家によっても意見は様々な、
「財政再建のタイミング」

 広く知られている通り、現在のわが国の一般政府債務は約1300兆円に達し、GDP比で見ると約240%と、世界最悪レベルの水準にあります。

 こうした日本のいわゆる「財政問題」についての見解は、実に様々です。
 たとえば、「日本の政府債務は非常に大きく、財政が持続的ではないので、できるだけ早く財政再建を進めるべきだ」という見解がある一方で、「日本政府が持つ資産を考慮すれば、純債務は小さいので、大きな問題ではない」という見解もあります。
 また、最近では、日本銀行(日銀)を政府の「子会社」と見なし、両者のバランスシートを統合して捉える「統合政府論」という考え方も主張されています。
 そこでは、「両者のバランスシートを統合すれば、日銀が資産として保有する国債によって政府債務は相殺され、その結果、政府の負債は小さくなるため、国の債務問題はさほど大きな問題ではない」とされています。

 討論会では、こうした様々な見解があることを前提とした上で、登壇者の方々の意見・見解を述べていただいたところ、「日本の政府債務をこれ以上増やさないよう、財政再建を進める必要がある」という点では、登壇者の見解はおおむね一致しました。

 しかし、「一体、いつ、どのように財政再建をすべきか」という点については、意見が分かれました。
 たとえば、「まず何よりも経済を成長させること(具体的には、名目GDPを引き上げること)を優先させ、成長が軌道に乗るまでは、増税など成長を阻害する政策は控えるべきだ」との意見が出されました。
 つまり、必ずしも財政再建を急ぐ必要はない、という立場です。
 たしかに、五輪特需などがある上、世界経済も良好なことから、日本経済は現在、一時的に高い経済成長を実現しています。しかし、潜在成長率(経済成長をする実力)は依然として低いままであり、少子高齢化がますます進んでいく中、今後も持続的に成長していけるかは不透明です。こうした状況のもと、経済成長だけを前提とした財政再建が本当に実現できるのか、私は疑問に思いました。

 その他、「現在の政府債務は大きすぎで、その債務はいずれ将来世代が負担しなければならないことを忘れてはならない。また、金利はいずれ上がることが考えられ、そうなれば、国債の利息支払いが大きくなりすぎてしまい、国の財政がますます悪化するだろう。だからこそ、できるだけ財政再建を急ぐべきだ」という意見もありました。

 このように、財政再建を急ぐべきかそうでないかについては、専門家の間でも意見が分かれているのが実情です。「日本の財政問題は深刻であり、財政再建を急ぐべきだ」というのが、昨今の一般的な認識だと思いますので、多くの方々にとって、この「事実」は意外かもしれません。

 なお、財政再建のタイミングについては様々な意見が出たものの、「一体どうやって、日本の財政を再建していくのか」については、今回のシンポジウムでも明確な答えは残念ながら示されなかったように思います。