11月23日(木・祝)、都内某所にて、竹中平蔵氏(東洋大学教授)、西村康稔氏(自民党衆議院議員・内閣官房副長官)、吉野直行氏(慶應義塾大学名誉教授)の3氏にご登壇いただき、「検証! アベノミクス」と題するシンポジウムを企画・開催しました。
 本連載では、そこで議論された内容の一部を、2回に分けてご紹介しています。 前回は(第二回)は、「財政再建の必要性の有無」について取り上げましたが、今回は、このシンポジウムのもうひとつの大きなテーマ、「金融政策の『正常化』のタイミング」について、どのような議論が展開されたのかをご紹介します。

考えられる「3つ」の
正常化へのタイミング

 2012年末にスタートした第二次安倍政権は、日本経済を再生する切り札として「アベノミクス」を打ち出しました。
 具体的には、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」を実行していく、というものです。
 そのうちの「大胆な金融政策」として実施されたのが「異次元緩和」と呼ばれる、大規模な金融緩和政策でした。
 現在、専門家の間では、どのタイミングで、この政策から「正常化」へと舵を切るかが大きな議論になっています。今回のシンポジウムでも、それを議題のひとつとして取り上げました。

 ここでいう「正常化」とは、大規模な金融緩和政策の一環として、日本銀行(日銀)が実施している市場からの国債買入れ額を、現在の年間50兆~60兆円から段階的に減らしてゼロにすること、ETF(上場投資信託)などの買入れ額をゼロに向けて着実に減らすこと、そして、10年物国債の金利を現在の0%程度から徐々に引き上げていくこと、などを指します。

 シンポジウムでの議論を紹介する前に、現在、専門家の間でいわれている「正常化」のタイミングについて整理しておきましょう。
 主に次の3つのタイミングがしばしば挙げられています。

① インフレ率2%が安定的に実現されたとき
② 2019年以降のいつか
③ 今

 ①は、日銀の方針で、日銀は、2%のインフレ率を安定的に実現するまで現在の政策を持続すると約束しています。
 一方、エコノミストの多くは、インフレ率2%を安定的に実現することは難しく、数年後(2019年以降)のどこかのタイミングで、日銀は「正常化」に動くと見ています(②)。

 エコノミストの多くが「今」ではなく、「2019年以降」としているのは、今、「正常化」へと方向転換すると、海外投資家(主に短期筋)が、日本円を「買う」一方で日本株を「売る」という行動に出る恐れがあるからです。
 そうなると、円高・ドル安が進み、日本株も下落する可能性があります。

 海外投資家の多くは、現在の金融緩和政策が続く限り、米国との金利差で円安・ドル高が進み、さらに株高も続くだろうと考えています。それゆえに、現在、「円売り・日本株買い」というポジションをとっています。
 しかし、その政策が大きく変更されたとなれば、そのポジションを解消し、「円買い・日本株売り」という行動に出る可能性があります。
 特に日本の株式市場は、海外投資家の影響力が非常に大きいため、彼らが日本株の「売り」に動けば、あっという間に株価が暴落してしまう恐れもあります。
 そうした懸念があるからこそ、日銀はそう早くは「正常化」には動かないだろうと、多くのエコノミストは見ているのです。