金融政策が、
「財政問題」を見えにくくしている?

 現在、「異次元緩和」とも呼ばれる金融緩和政策を続けることで、さまざまな副作用が顕在化してきています。
 たとえば、長引く低金利によって金融機関の収益が悪化したり、一部の資産価格がバブル的な水準まで高騰したり、などです。
 にもかかわらず、「今、正常化に動くべきだ」という意見はあまり出てきません。それどころか、「他に手段はない」とか、「金融緩和を続ければ、いずれ経済はもっと成長するし、それが財政再建につながるはずだ。だから、経済が安定的にもっと成長するまで、日銀には頑張ってもらいたい」という意見もあるくらいです。

 これらの主張は私にも理解できます。ただ、このままでは、日銀を本来の役割とは異なる方向へ向かわせかねません。
 日銀の本来の役割は、「金融政策を実行する」ことです。しかし、現在の流れを見ていると、「成長」という名目のもとで、「政府の財政再建を遅らせ、必要な改革も先延ばしにするための道具」という役割を日銀に担わせる方向に、政府が突き進んでいくことを暗示しているようにも思えるのです。

 しかも、日銀にそうした役割を担わせることについての合意が、日銀や国民、そして有識者の間に、必ずしもあるわけではありません。
 にもかかわらず、静かに、しかし確実に、そちらの方向に進んでいくことについて、私は懸念を覚えます。

 「他に手段がない」といって、現状のまま突き進むのであれば、最悪の事態(たとえば、高い経済成長も財政再建も実現しない状態、など)になった際に、政府や日銀がどう対応するのかについてのシミュレーションや対応策も、同時に検討しておくことが重要だと考えます。

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 今回のシンポジウム全体を通じて、日本の「財政再建」の問題や、日銀が現在行っている「金融緩和」に関する問題については、そう簡単には解決できそうにはないという現実が、あらためて浮き彫りになったと感じています。
 これらの問題について、私たち国民は、他人事としてではなく、もっと主体的に関わっていく必要性があると、あらためて痛感します。
 今後、国民の間でもっと議論を重ねて理解を深め、よりよい道を探っていく地道な努力を続けていく他はないでしょう。

※次回更新は2018年1月15日(月)の予定です