アメリカ中間選挙の行方を左右する
「エバンジェリカル」という存在

  それには、トランプ政権が今後も持ちこたえられることが大前提になるかと思います。事実、今、トランプ政権への支持率は30%台と、低迷しています。大統領選に絡むロシア疑惑に対するモラー特別検察官によるトランプ陣営の訴追がなされていますし、今後の調査の動向が注目されます。
 ただ、そうはいっても、トランプ氏はタフ。2018年11月にはアメリカでは中間選挙が控えており、かろうじて共和党が勝利するのではと私は見ていますが、そのあたり、寺島先生はどう見ていらっしゃいますか?

 それを考える時のヒントとなるのが、アメリカでの「エバンジェリカル」(福音派キリスト教徒)と呼ばれる、キリスト教原理主義者たちの存在です。
 アメリカではキリスト教徒が多数を占めますが、その中で彼らエバンジェリカルが、近年大きな勢力を持つようになってきています。共和党の大きな支持層でもあり、副大統領のペンス氏も熱心なエバンジェリカルとして知られています。
 実は、2017年12月にアメリカがエルサレムをイスラエルの首都と認めたことも、エバンジェリカルの意向が大きく関わっているといわれています。
 このエルサレム首都認定問題について、日本のメディアでは、トランプ氏の娘婿のクシュナー氏など、ユダヤ人勢力の影響力でトランプ大統領が決断したと説明しがちですが、それ以上に影響力を持ったのが、このエバンジェリカルと呼ばれる人たちです。
 ユダヤ人でない彼らが、なぜイスラエル支持なのかというと、日本人にはなかなか理解しづらいのですが、聖書の言葉を「神の言葉」としてそのまま信じる彼らにしてみれば、イエスが十字架を背負って登り、そして処刑されたと新約聖書に書かれているエルサレムのゴルゴダの丘が、イスラムによって占有されている状態は耐えられないのです。
 そういう力学のもとに起こったのが、今回のエルサレムの首都認定というわけです。

 そうしたエバンジェリカルが11月の中間選挙でも大きな存在感を示すということですか?

 そうです。トランプ大統領自身への支持率は低迷したままであっても、エバンジェリカルの人々の支持によって、「共和党」そのものは意外と持ちこたえられるかもしれないという人もいます。

 となると、支持率が低いままでもトランプ政権は維持されていく、となりそうですね。トランプ大統領の弾劾を求める声がアメリカではしばしば上がっていますが、実際の弾劾手続きとなると簡単ではありませんしね。

 アメリカという国において、弾劾というプロセスで大統領を辞めさせることは非常に難しく、それには大きな壁があります。
 ロシア疑惑について、現在、モラー特別検察官の捜査チームが、それこそトランプ大統領の青年時代の裏金作りといったところまで含め、洗いざらい調べていますから、政権を揺るがすようなレポートが提出される可能性も高い。
 ただ、その結果、トランプ政権が倒れてしまえば、アメリカという国の存立にも関わってくるので、ある種の司法取引で事を収めるのではということもあり得ます。

IT産業が2018年も
世界経済を牽引し続ける

 トランプ政権は維持される可能性が大きいとして、2018年のアメリカ経済についてはどう見ていらっしゃいますか?
 先ほど、2017年はアメリカの株式市場において、実体経済から乖離したようなマネーゲームの肥大化が起こっていると指摘されていましたが。

 そうした一面もありますが、アメリカの実体経済そのものにも勢いがあるのは事実です。その中心となっているのが、IT関連の産業。
 白井さんも「AGFA」という言葉をよく耳にされると思いますが、これはApple、Google、Facebook、Amazonという4つのアメリカ企業の頭文字をとったもの。こうしたIT企業が、アメリカのみならず、世界全体において、IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)、ビッグデータといった、ビジネスの最前線をぐいぐい引っ張っていっている。
 今、アメリカ経済は好調といわれていますが、それはトランプ政権の経済政策が成功しているからではありません。実際、政権が一生懸命カンフル注射を打ち込んでいる石炭や鉄鋼のような産業は、衰退の一途をたどっています。
 2018年もこうしたIT企業がアメリカを、そして世界経済を牽引し続ける流れは変わらないのではないかと思っています。
 そして、もう1つ指摘するならば、こうしたアメリカのAGFAに対抗し得るコンセプトの企業が育っているのは中国であり、残念ながら、日本には今のところ1社もないという状況です。

 たしかに中国では、アリババやテンセント、バイドゥといったIT企業が台頭してきています。
 ということは、先ほど、太平洋地域をアメリカと中国が牛耳る可能性があるとおっしゃっていましたが、経済分野においても、米中の存在感がますます増していくと。

 日本の経済人と議論していて強く感じるのですが、その多くが、中国経済の躍進のスピード感についていけず、「立ちくらみ」を起こしているような状況にあるように思います。2000年、中国の名目GDPは、日本の4分の1程度でしたが、その約10年後の2010年には日本を追い抜き、ここ数年は日本の2倍以上、2018年には3倍近くになる見込みです。
 ところが、日本の経済人の多くは、中国経済に対して2000年の頃のイメージを引きずっている。
 また、日本の貿易構造についても、今やアメリカに代わって中国が最大の貿易相手国になっているのに、いまだアメリカの方向を向いている経済人や日本企業は少なくありません。
 つまり、経済産業の関係において、中国との関係がどんどん深まっているのに、頭の中の8割くらいはいまだアメリカとの関係が占めているのです。
 日本の産業界は、このあたりの整理を今後しっかりつけていく必要があります。