「安全通貨」になりやすい通貨には、
2つの特徴がある

 2017年、北朝鮮からの度重なるミサイル発射に、日本列島は大きく揺れました。そのうち、8月と9月の発射では日本列島の上空を通過し、その脅威を現実の危機として感じた国民も多かったのではないでしょうか。

 こうした、ある意味、「有事」に直面した際、市場においてその国の通貨は売られるのが一般的です。リスクが高いとして避けられるからです。
 ところが、日本円の場合、そうなっていません。北朝鮮のミサイル発射が発表されると、逆に円が買われ、「円高」が進むという現象が起こるのです。

 その理由は実は非常にシンプルで、日本円が「安全通貨」だからです。
 安全通貨とは、戦争等の有事や経済危機などが起こり、投資家たちの間で「どんどんリスクをとって儲けよう」という意欲が弱まった時(リスクオフの時)に買われる通貨のことです。
 かつては、「有事のドル買い」といわれ、ドルが安全通貨の定番でしたが、現在は、安全通貨といえば、「日本円」と「スイスフラン」です。
 2008年に起こったリーマンショック後の世界金融危機以降、この2つの通貨が他の通貨全般に対してたくさん買われるようになったのです。その結果、円高・スイスフラン高となりました。

 では、なぜこの2つが安全通貨となったのでしょうか。
 それには2つの理由があります。
 1つが、どちらの国とも、長い間、低インフレだったために低金利だからです。
 こうした国の通貨は、投資家が投資に必要な資金を調達する時の通貨(「調達通貨」)になりやすいという傾向があります。
 たとえば、投資家が積極的にリスクをとる資産運用の方法に「キャリートレード」と呼ばれるものがあります。これは、金利の低い通貨で調達した資金を金利の高い通貨に換え、高い金利で運用し、その金利差で稼ぐという方法です。
 日本円やスイスフランなどの低金利の国の通貨は、このキャリートレードで「調達通貨」になりがちです。そして、調達後は売却され、より金利の高いドルや新興国の通貨に交換されるため、どちらかというと円安やスイスフラン安になりやすい傾向があります。
 しかし、有事となれば、投資家はその投資ポジションを一気に解消しようとするため、逆に日本円やスイスフランは買われ、円高やスイスフラン高が進みやすくなります。つまり、この2つの通貨は、有事の時に買われる通貨ゆえに、安全通貨となり得るわけです。
 また、物価の上昇は金利の上昇要因となるため、低インフレであれば、金利も上がりにくく、このことが、さらに調達通貨として選ばれやすくなる要因となります。

 理由の2つ目は、どちらも経常収支が黒字で、対外純資産(海外保有している資産から負債を差し引いたもの)もたくさん持っているということです。
 たとえば、対外純資産は2016年末時点で日本は世界1位、スイスは6位となっています。これほど大量の資産を持っているがゆえに、両国ともその通貨は「安全」と見なされやすくなるのです。