日本円は「安すぎ」、
スイスフランは「高すぎ」

 さらにいえば、スイスフランと日本円とを比較した時、日本円のほうが安全通貨として買われる傾向があるようです。
 それは、日本円が実体から見て安すぎるのに対して、スイスフランはまだ高すぎるからです。

 高すぎれば、有事の際に需要が増えても、これ以上どんどん高くなっていくとは考えにくいといえます。一方、安すぎればその逆で、高くなる可能性があります。
 そのため、有事になりそうだと投資家が判断した際には、「スイスフランより日本円を安全通貨として持っていたほうがお得だ」と、日本円のほうがより買われる傾向があるのです。 
 こうしたことも、北朝鮮のミサイル発射の後に、日本がアジアに位置するにもかかわらず、円が買われ、円高になる要因として、大きく働いているといえます。

 ちなみに、日本円もかつてはスイスフラン同様、実体より高すぎる傾向がありました。それが現状のように「安すぎ」に変わったのは、黒田東彦日本銀行総裁のもとでの、現在の金融緩和政策によることが大きいといえるでしょう。
 その意味で、超円高傾向にあった日本円を是正し、実体よりも安すぎる状態をもたらしたことも、この金融政策の結果だといえます。
 また、この円安は、日本株高をもたらす重要な要因にもなりました。





「軍事行動」さえなければ、
北朝鮮問題の経済への影響は軽微?

 さて、北朝鮮のミサイル発射後の市場の反応には、「円高が進む」という他に、数日もするとすぐに「円安に戻る」という特徴もあります。
 くり返し実施されたことで、次第に市場もこの状況に慣れてしまい、最近は、1日足らずで元の方向に戻ることも多くなっています。
 すぐに円安に戻る理由としては、現在の日銀の金融緩和政策の効果も挙げられますが、それ以上に、経済的見地から見て、北朝鮮の問題が世界経済にとってさほどリスクがないということが大きいでしょう。
 北朝鮮は資源国ではないため、そこで何かが起こっても、世界の商品取引所などで取引されている原油や金、農作物といった商品の価格にほとんど影響を与えません。そのため、世界経済への打撃は大きくないと市場は捉え、すぐに元の状態に戻るのです。
 さらに、世界第2位の経済大国である中国の経済も、北朝鮮の影響をほとんど受けません。
 こうした点からも、北朝鮮に対してアメリカが軍事行動に出ない限り、あるいは中国が北朝鮮問題に直接的に介入(詳しくは、本連載の第4回をご参照ください)しない限り、北朝鮮の脅威が日本経済に与える影響はそれほど大きくないというのが、日本のエコノミストの大半の見方といえます。
 ただ、それは逆の見方をすれば、万が一、アメリカの「軍事行動」、あるいは中国の「直接介入」という事態になれば、そうした前例がないため、その先の展開を想像することが難しく、それゆえに世界の投資家が「リスクオフ」の状態(リスクをとってどんどん儲けようという意欲が弱まっている状態)に陥りやすくなります。
 そうなった時には、日本、さらには世界経済、および日本円や株価に、少なからず影響が出てくる可能性もあります。

※次回更新は2018年2月14日(水)の予定です