いまだ「欧米偏重」の
日本の対外証券投資

 第11回では、アジアの国際金融センターとして、近年、中国やASEAN諸国の存在感が増してきている状況について述べました。
 こうした中にあって、日本の証券市場は、現在、どのような立ち位置にあるのでしょうか。
 日本では20年くらい前から、政府が旗振り役となって「東京をアジア、さらには世界の金融センターにしよう」という動きがありました。さらに2013年に東京オリンピックの開催が2020年に決まると、それをきっかけに東京都が「東京国際金融センター構想」を策定。その実現に向けて具体的に動き出しています。
 ただ現状を見ると、中国やASEAN諸国の証券市場の成長の勢いに比べて、日本の証券市場の存在感は薄いと言わざるを得ません。証券投資による対外資産規模はアジア第1位であり、国内にも余剰資金が多く、投資するお金はたくさんあるにもかかわらず、です。
 それどころか、日本がずっと目指していたアジアの金融センターとしてのポジションは、いまやすっかり中国、香港、シンガポールに取られてしまっている状態です。つまり、拡大の一途をたどるアジアの証券市場において、日本は少し置いてきぼり状態にあるようなのです。


 その最大の原因は、日本の対外証券投資が圧倒的に欧米向けだということでしょう。
 欧米の証券市場は現在、日本と同じく金融緩和政策によって低金利の環境になっています。それでも日本の対外証券投資は、アジアではなく欧米に向かっています。
 その理由としては、欧米の証券市場の歴史が古く成熟していることや、取引が活発なこと(流動性が高い)が挙げられるでしょう。
 日本の対外投資家は、年金基金や保険会社、銀行などの機関投資家が中心で、年金や保険は長期にわたって給付する商品のため、彼らはその運用においてリスクを避ける傾向が強くあります。そのため、安心して取引ができる欧米を選択しやすいのです。
 その他、為替ヘッジ(為替変動リスクを避けるため、外貨の先物取引や信用取引などを利用すること)をする場合、そのヘッジコストがアジアの通貨より、ドルやユーロのほうが相対的に安いことも、理由の1つといえます。


 また、海外からの日本への証券投資を見ても、やはり圧倒的に多いのは欧米で、アジアからの日本への証券投資はまだ少ないのが現状です。
 つまり、日本はアジアの中にあるにもかかわらず、相変わらず欧米に目が向き、アジアに証券投資することにも、逆にアジアからの証券投資を呼び込むことにも、関心がいまだ低いようです。
 そうしたスタンスでは、アジアの「金融センター」でトップのポジションを得ることは難しいと言わざるを得ません。