あまり近くで暮らしたくない生き物には、蚊だのゴキブリなどもいるが、最たるものが独裁者と恐竜である。古今の戦争英雄だの肉食恐竜のそばで生活するのは、神経のくたびれるものだろう。しかしいずれも、時空を隔てて眺めるぶんにはまことに面白い対象で、子供時代の関心がいい歳になっても持続する傾向があるように思われる。

 恐竜に関しては、化石の新発見のニュースがときどき新聞に出る。今年に入ってからも、前脚の指が1本だけの肉食恐竜の化石が見つかったという記事があった(1月25日「毎日新聞」)。ふつうは3本指か2本指なのだそうだ。恐竜が変温動物か恒温動物かという問題や、それに関連して羽毛のあるなしに係る見解なども最初は新聞記事で知ったことで、少年時代のワニやトカゲに似た全身ウロコのイメージを修正するのに、ちょっと抵抗感があった。コモドオオトカゲを何十倍も大きくした怪物が、巨大な木性シダの森を闊歩している情景が抜きがたく老生の脳裏に巣くっているからである。最新の恐竜イメージはどうなっているのだろうか?

 今年は羽毛恐竜が報告されてから15年、始祖鳥(アーケオプテリクス)の名が作られて150周年なのだそうだ。そういえば、始祖鳥がトリの祖先かどうかという論争もありました。

 展示の主役はティラノサウルスとトリケラトプスで、化石を組み立てた巨大骨格をみているだけで満足感が得られるのは、さすが恐竜界の大スターといったところであるが、今回は前者の復元図に羽毛に関する新解釈が適用されている。それによると、頭から尻尾にかけての背中側に長い羽毛が生えていて、顔面や脚部にはウロコが表面に出るという姿になっている。なんとなく凄味に欠けるような印象だが、近くにいるとやっぱりこわいでしょうね。ちなみに「恐竜博2005」では顔と脚先以外は全身羽毛におおわれた恐竜の復元図が掲示されていました。

 羽毛に関しては、もうひとつその色彩を復元するという問題があり、今回の展示でもテーマのひとつになっている。メラニン色素を含む細胞小器官を解析するのだそうだが、けっこう多色の恐竜もいたことになり、ますますワニなどのイメージからは遠ざかる。しかし、トカゲ類には華やかな色をもつものもいるから、羽毛恐竜ならずとも色彩豊かな恐竜たちがそれなりにいたかもしれない。そういう賑やかなジュラシック・パークも可能性としては考えられるであろう。

 始祖鳥に関しては、これまで発見された各種標本が展示されていた。いずれも現在のドイツ南部の露出石灰岩層からみつかっているのだそうだ。始祖鳥が帰巣本能を強くもつトリで、ここが彼らの墓場でもあったというなら面白いが、そういうわけでもなく、偶然の産物なのでしょう。始祖鳥を恐竜とするか鳥類とするかについてはまだ決着がついていないらしい。

 夏休み期間はお子さんとその保護者による混雑におそれをなし、9月になってからみに行ったため、紹介が遅れ、残りの日数が少なくなってしまいました。主催者にも読者にも、申し訳ない次第です。すみません。