明けましておめでとうございます。

 昨年後半は、この展覧会紹介もさぼりがちで失礼いたしました。今年は月1ペースを守るべく努力いたす所存ですので、よろしくご愛読たまわりたい、とまずは殊勝に年頭のご挨拶をさせていただきます。

 その間、展覧会を巡るのを休んでいたわけではなく、出光美術館の「東洋の白いやきもの―純なる世界」、奈良国立博物館「正倉院展」、国立新美術館「辰野登恵子・柴田敏雄 与えられた形象」、同「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘密」、三井記念美術館「近江路の神と仏」、東京都美術館「メトロポリタン美術館展 大地、海、空―4000年の美への旅」、東京国立博物館「中国 王朝の至宝」、同「出雲―聖地の至宝」、三菱一号館美術館「シャルダン展―静寂の巨匠」などを拝見しましたが、いずれも会期の終わりごろに駆けつけたため、ご紹介するに至りませんでした。すみません。

 年末年始に三越デパート本店で行なわれた「十五代樂吉左衞門 フランスでの作陶―LOUBIGNACの丘の上で」はとてもおもしろかったが、この欄で紹介するには会期が短かすぎた。

 今回紹介するのは展示ではあるが、特定の展覧会ではない。東京国立博物館(以下、東博と略称)東洋館の改装工事が完了したので、それを取り上げる。

 改修のきっかけは建物の老朽化と耐震性強化だったようだが、途中で一昨年の3・11大地震があって、半年ほど開館が遅れ、この正月からようやく再開される運びとなった由である。

 東洋館は、エジプトを含む西アジアから朝鮮半島に至る広大な地域の多様な遺産をかなりよく収集展示していて、以前はときどき入館してはぶらぶらして帰ったものである。今回のリニューアルオープンは老生にとって、そういった楽しみの再開でもある。

 展示室に入ってまず驚いたのがガラス。アジアの古代ガラスではない。展示ケースのガラスである。ドイツ製だそうだが、分厚いものであるにもかかわらずきわめて澄明で、展示品の細部がよくみえるうえ、みている自分の投影が希薄で鑑賞の邪魔にならない。中国青銅器を並べた弧状のケースなどは映画でシネマスコープが出現したときのような新鮮さが感じられた(たとえが古過ぎますかね?)。しかし、ガラスばかりに感心したのでは、せっかくの名品を並べた展示担当者としては不本意だろう。もちろん陳列の目玉はある。

 中国絵画がよかった。

李迪の「紅白芙蓉図」(国宝)は南宋・慶元3年(1197)という制作年のわかる貴重なもので、花びらの柔らかな色彩が美しい一対である。こういう繊細な小品ではガラスのよさがひとしおありがたい、とまたガラスの話になってしまいました。

 同じ南宋12世紀の「瀟湘臥遊図巻」(国宝)の淡々としたのどやかさもよかった。他の分野でもそうだが、南宋時代の洗練を極めた美術をみていると、これでは北方から侵攻してきたモンゴルの荒ぶる軍勢にはとてもかなわなかっただろうなと実感する。南宋が臨時の都を構えた浙江省杭州の風光を眺めたときもそんな気がした。日本の相撲界がモンゴル勢に席巻されるのはやむをえないが、せめて優美なよさは保ってもらいたい、などと余計なことを考えてしまいます。

 目下のわびしいわが心情としては羅稚川「雪汀遊禽図」(元、 14世紀 、重要文化財)がよかった。枯木に数羽の鳥が止まり、彼方の飛鳥の羽音がひょっとして聞こえてきはしまいかというような寒厳・静謐の世界である。いずれも1月27日まで公開。

 とくに好きというわけではない董其昌や八大山人の書も、今回の展示作品は好ましかった。東洋館ぶらぶら歩きを今後もしてみたい。

 ついでに本館に展示されていた長谷川等伯筆という「松林図屏風」(16世紀、 国宝)を拝見した。先年の等伯展ではあまりの混雑でみるのを断念したものである。ただし、1月14日までの新春特別公開だそうで、この拙文が出るころにはまたお蔵にしまわれているはずです。残念!