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台所(城から母を追い出す)

第2回「台所(城から母を追い出す)」メインイラスト

編集長として夜の長崎を紹介するタウン誌を作る仕事に就いている間に、父が亡くなり、その後母が認知症を発症しました。そして母の城だった台所が、母にとっても家にとっても、いちばん危ない場所に変容していったのです。

ガス警報器が鳴ってるところに帰宅した事もありました。母が手先を包丁で切る事も何度かありました。
その頃ご近所の人に、立ち話で「火事がいちばん怖かとですよ」と言われることがあり、その都度何となくムッとしてましたが、近所の方の不安は、しごく当然の事でした。

母の目の届かない所に包丁を隠し、もう料理を作らないでいいから、俺(おい)が作るから、と母を城(台所)から追い出しました。
幸い、夜の店を取材するなど朝も夜も関係ない仕事だったので、チョクチョク帰宅して三食を母と一緒にとる事が出来ました。作ったり、スーパーやコンビニで出来合いの物を買って来たり、中学から高校にかけての息子にも手伝ってもらったりして、どうにか乗り切っていました。