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篠山紀信「台湾展」第2報 講演会報告
『篠山紀信 SHINORAMA TOKYO』展 2010年10月16日(土)―2011年1月2日(日) 台北市立美術館

台湾展会場の篠山紀信
台湾展会場の篠山紀信
01_2010年10月17日 台北市立美術館の講堂で『SHINORAMA TOKYO』の講演会開催!
 日曜日の午後3時、会場は台北の若者中心に満席となり、熱い視線が写真家に注がれた!

篠山紀信台湾展SHINORAMA TOKYO講演会会場は若い人たち中心で満員の盛況だった。
日本のナンバーワン写真家の講演会
とあって、会場は大入り満員。
若者を中心に、若手写真家、学生など
大型スクリーンに映し出された
シノラマ作品を目の前にした
本人からのわかりやすい説明に
熱い視線と時折起こる笑いが
会場を満たした。
台湾の写真界は、戦後の日本の写真を
お手本にして育ったといえる。
写真の講座のある日本の大学や
写真専門学校に留学した人も多い。
彼らにとっては、ヒーローの登場、
開会前に、ロビーで自作の写真集を
篠山紀信にプレゼントし、
評価を聞き出す若手写真家もいた。
彼らの興味は、台湾では大スターの
山口百恵や宮沢りえの写真集を撮影した有名写真家が、
どのような芸術写真をどのような技法で撮影しているのかということに興味が尽きない。
商業的成功とこの展覧会で展示している、必ずしもコマーシャライズされているとはいえない作品とが、
なぜ両立できているのか?
そんな思いが渦巻く会場に、篠山紀信が登場。
この展覧会が開かれたいきさつから、講演会は口火を切った。
02_講演会は、40年の写真人生、「シノラマ」誕生のいきさつ、
 その技法の解説を中心にしたトークが第1部。
 大型スクリーンに映し出された「シノラマ」を見ながらの作品レクチャーの第2部と、
 具体的でわかりやすい話の面白さに会場は、熱気となごやかな笑いに充ちた。

台北市立美術館の10月催し案内。メイン企画の篠山紀信展の写真が表紙をかざる。
篠山紀信『SHINORAMA TOKYO』台湾展の会場で配られるパンフレット
話は写真人生からはじまった。
スタートした1960年代半ば、
東京は発熱していた。
高度経済成長の活気を背景に、
小説、映画、小劇場やアングラ、そしてパフォーマンスと
新しい表現ジャンルが生まれ、
表現としての写真に
強い可能性が見えた。
もともと写真好きという
ことでもない青年を支えていたのはそんな時代の直感だった。
いままでにない面白いことが
できる、この1点が
スタートラインだった。
60年代末、20代最後の年の
独立と同時に、あらゆる雑誌
メディアから注文が殺到、
そこからありとあらゆるジャンルの写真を撮り続けてきた。
女優、アイドル、時代、建築、
旅、そして芸術写真。
写真であればそこに垣根は
なかった。
日本の雑誌メディアの隆盛と
ともに、表紙から中の特集にいたるまで、
篠山紀信の写真が、誌面を飾らない日はないほどだった。
その華々しい70年代を時代とともに駆け抜けると、
80年代、今では「バブル」と名づけられた狂瀾の時代がやってきた。
この「虚と実」が交じり合う都市TOKYOを写真で捉えるために、「シノラマ」という手法が編み出された。
その時、この展覧会のテーマ「嘘の上に嘘を重ねてリアルにいたる」が生み出されたのだ。
上の動画で、そのあたりの解説は篠山紀信ご本人のお話をお聞きください。


(図版上左)会場で配布された展覧会パンフレット (図版上右)台北市立美術館のニュースレター 表紙は篠山作品が飾る
03_「シノヤマ」と「パノラマ」を合成した造語「シノラマ」による時空解体術!
 その具体例をスクリーンで見ながら、巨匠自らのレクチャーは貴重映像です!

シノラマ作品「刺青」1987
シノラマ作品「大相撲」1995
シノラマ作品「村上隆とピポンフォクトリー」1987
図版上から、
シノラマ作品「刺青」

シノラマ作品『大相撲』
1995年 から

シノラマ作品
『TOKYO ADDICT』から
村上隆とピポンファクトリー
2000年

シノラマ作品
『TOKYO NUDE』
1990年 から
シノラマ作品『TOKYO NUDE』1990より
台北市立美術館外観
台北市立美術館外観
篠山紀信は「シノラマ」でいくつかの手法を作りだした。
数台のカメラを並べ、例えば360度の空間を同時に
シャッターを切り、繋ぎ合わせて1枚の作品にする。
『大相撲』の写真がそれに属する。
空間はゆがみ、レンズの歪みで繋ぎ目にズレを生じているが、この写真には、カメラの台数分の正面があり、
不思議な空間構成を形作る。
ここでは8×10(エイトバイテン)という大型カメラが
使われているので、相撲取りの一人ひとりの表情まで
映し出されている。
そこにとどまらず、全員が正面を向くことで、
人間がフィギアのような虚構感をただよわせている。
「刺青」では、1台のカメラに時間差を与えて、
左右に振ることで、男たちの数が倍になっている。
よ〜く見ると、同じ人物を捜し出すことができる。
しかし、現実にカメラを構えて、かれらの前に立つと、できあがったデフォルメによって、
かえって感覚的リアルを表現してくれる。
村上隆とそのチームのシノラマでは、8×10の細密描写の上にカメラの技法「あおり」を使い、
すべての被写体にピントを合わせ、ある意味では不自然さを取り入れながら、
なお、2枚のシノラマで空間を解体するという二重の手法を重ねている。
『TOKYO NUDE』の作品では、まずヌードの女性とマネキンを対峙させ、
人間とレプリカントの境界の曖昧さを暗示している。
シノラマ技法では、より大胆に写真のツナギ目を無視し、カメラの位置も移動し、
物理的にもことなる視線を、ひとつのイメージでつなぐ手法を使っている。
ここでは、ガード、横断歩道、踏切という、境界をまたぐという共通点を、
視覚的なトリックを使って合体させ、ミドリやキイロの光が投げかけられ、
あたかもTOKYOに異界への通路が開けられたような、魔界都市の風貌をかもし出している。
写真家本人からの作品レクチャーに、会場は次第に熱気をおび、演壇に立つ篠山紀信へは
大勢のメディアや観客からカメラ攻めとなっていた。
この後、第2部の白熱の質疑応答へと移っていった。

篠山紀信台湾展SHINORAMA TOKYO講演会終了後写真撮影責めに合う篠山紀信
次回のvol.2は、2010年11月30日(月)の予定です。
「篠山紀信台湾展第3報」をお届けします。
ご期待ください。

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