連載第十回:これであなたも「ぬり」名人  「ぬり」がいいと「デコ」も映える

 第八回では、デコぬりえが街に出たというお知らせをしました。
 デコぬりえ体験のイベントに参加された方は、みなさん、「デコる」というぬりえの新しい楽しみ方が気に入ったようでした。しかも、完成した作品はどれも素晴らしいデキ。参加者全員がデコ初体験だったにもかかわらず、どうして素敵な作品に仕上がったのか、ちょっと考えてみました。
 みなさんのセンスの良さはもちろんなのですが、指導に当たったyun先生が、あらかじめきれいに色をぬり、下地をつくっておいた――この点は大きかったように思います。ぬりえ美術館の「大人のぬりえサロン」で講師を務める先生は、自分の好みで色をぬっているわけでなく、カラーコーディネートを考えて色をチョイスしていますから、「デコ」前の「ぬり」の段階で、すでに完成度の高い作品に仕上がっていたのです。みなさんの作品の素晴らしさは、先生の「ぬり」があってこそといえるでしょう。
 ぬりえの基本は、やはり「ぬり」といえますから、これがしっかりしていると、デコのイメージも決めやすく、仕上がりのバランスも良いのです。
 そういう視点で、これまでに紹介したyun先生の作品をふりかえると「なるほど」と納得してもらえるのではないでしょうか。
yun先生の作品。ていねいな「ぬり」が「デコ」成功の秘訣。
 デコにハマると、「はる」のが楽しくてたまらなくなりますから、ぬっているうちから、「早くデコしたい!」と、どうしてもそちらのほうに気をとられてしまいます。でも、完成度を上げるためには、しっかりとした「ぬり」が不可欠。これが甘いと、せっかくの力作が、どこか物足りない感じになってしまうのです。
「ぬる」にたっぷりと時間をかけると、「デコ」の発想が豊かになるような気もします。

「明度」と「彩度」を意識して

「ぬりえを上手にぬる方法はないでしょうか?」
 こんな質問をyun先生にしてみました。
 色を選ぶ際、絵のイメージを優先させているつもりではいるのですが、どうしても好きな色や色合いを選んでしまう傾向があり、それを打ち破ると、もっとぬりえが上達するのではないかと思ったのです。
 これに対して、yun先生は、「色を選ぶときに、明るさや鮮やかさを意識してみてはどうでしょうか」といって、トーンイメージをわかりやすい図にまとめてくれました。それが図です。
 これを見ながら、先生の説明を聞くことにしましょう。
トーンイメージ
「色には明度彩度があり、明度とは明るさの度合い、彩度とはあざやかさの度合いです。
 図では明度を縦軸で、彩度を横軸で表現しました。中学生の頃、数学で習った座標を思い出していただくとわかりやすいかもしれません。座標で考えると、y軸が明度で、x軸が彩度になります。
 明度を数値で表わすなら、数値が高いほど(図では上にいくほど)、色は明るさを増すことになり、明度0%であれば黒、明度100%なら白になります。
 彩度の場合は、彩度が高いほど(図では右にいくほど)、色は鮮やかさを増し、彩色0%であれば白・黒・グレー、彩度100%なら純色(白・黒・グレーを含まない色)ということになります」
 数学が苦手な人は、座標軸を思い出しただけで、暗い気分になってしまったかもしれません。そんな人は気分を変えて、図中にいくつかある円形部分に注目してください。
「これは色と季節の関係を表わしたもので、たとえば春を表現したい場合は、すべての色に大量の白を混ぜた色を使えばいいのです。赤に白なら薄いピンク、青に白なら淡いブルー。画面全体がやさしい感じになり、やわらかな春の日差しを連想させます。
 いっぽう夏は、春とは違って、じりじりと照りつける太陽のイメージですよね。ですから、色でいえば、まじりっけのない赤、青、黄、緑など。昔からきいちのぬりえにぴったりとされる原色を中心に組み合わせてみてください」
  
  
  

大画家の気分でぬっちゃいましょう

 yun先生の説明はさらに続きます。
「図にはもう一つ、別の要素も入れてあります。
 赤い文字に注目してください。ルノワール、ローランサン、ゴッホ、ピカソなど、誰もが知る大画家の名前が書き込まれていますね。彩度と明度、そして季節を考えることで、大画家の世界さえ表現できるということなのです。
 たとえば、明度がもっとも高く、彩度が中間くらいの色を選ぶとルノワール独特の光あふれる世界が表現できますし、明度と彩度がそれぞれ中間ぐらいの色、つまり淡い色に明るいグレーを混ぜた色でまとめると、女性に人気のローランサンの世界になるというわけです」
 こうして考えると、図は何通りにも役立つすぐれものです。
 画家によっては、制作された年代によって画風が異なる場合がありますが、それにしても、このトーンイメージにそってぬれば、ゴッホやピカソ的表現も夢じゃないというのですから、すごい! まったりとしたきいちの少女絵と、天才ピカソ、そしてダ・ヴィンチとのコラボレーションです。
 図の内容をもっとわかりやすくするために、yun先生は図も作成してくれました。こうした色見本のようなものがあると、カンタンに色の組み合わせができますね。
配色パターン
 たとえば、「ルノワール的な表現がしたいなぁ」と思ったら、図の「淡色」で使われている色をベースに、「モジリアニがいい」という人は、「暗濁色」の色を中心に選ぶと良いということなのです。
 そこで、さっそく図を参考にルノワールとモジリアニの世界を表現してみましたが、いかがでしょうか。自分の好みを優先させて色を選ぶのもいいのですが、ときにはこんなふうに計算して色を決めるのも面白いものです。
 yun先生、オリジナリティーあふれる図をありがとうございました。
 みなさんも、これらを十二分に生かしてぬりえの世界に遊び、「ぬり名人」「デコ名人」をめざしてください。
左:ルノワール風?・右:モジリアニの世界を意識