連載第十八回:幕張メッセから「デコぬりえ」発信!

 子どもの頃にぬりえを楽しんだ記憶はあるものの、あのときのワクワク感までは覚えていない……という人は多いのではないでしょうか。
 いまも大人のぬりえに熱中している人にデコぬりえを楽しんでもらうのはもちろんのこと、今回は、当時の楽しさを忘れてしまった人にも、かつて夢中で遊んだ感覚を思い出してほしいとのことで、「エキスポS65+(エキスポスーパー65プラス)」(主催:日本エグジビション株式会社)というイベントに「きいちのぬりえ」を取り上げていただきました。幕張メッセで開催されたこのイベントは、65歳以上の方を対象に、「素敵なライフスタイルの実現」に向け、さまざまな企業や団体が情報を発信する場として、昨年からスタート。
 ぬりえとの“再会”で脳をイキイキさせ、より活気に満ちた毎日を送ってほしい――というわけで、ぬりえ美術館の金子マサ館長の指導のもと、11月16、17日の2日間にわたり、「きいちのデコぬりえ」のセミナーがイベントの一環として開催されました。
金子館長の説明を聞きながら、「ぬりえをするのは何十年ぶりかしら」と言う参加者たち。

勝手知ったるぬりえの世界

 セミナー会場を訪れた人の中には、最初から「デコぬりえ」のセミナーを目指しておいでになった方だけではなく、「会場で声をかけられたので、懐かしくて立ち寄ってみました」という方もいらっしゃいました。ですから、ぬりえをするのは60年ぶり。そんな方は、どんなふうにぬりえを“再始動”するのかと興味深く見守ることにしました。
 そこで、まず驚いたのは、“ブランク”を感じさせないぬりっぷり!
 金子館長の説明が終わるか終わらないうちから、色えんぴつを手にドンドンぬっていきます。机の上に用意された色えんぴつとぬりえを見た瞬間、子どもの頃の記憶が蘇り、躊躇なくぬりえの世界に入っていけたのだそうです。
 大人の感覚で、黒を基調としたモダンな色使いでまとめている人もいましたが、多くの方が、赤やピンク、ブルーなど、子ども時代に好んだ色を選んでいることからも、昔と同じ感覚でぬりえを楽しんでいる様子がうかがえます。
「押し花やヨガ教室など、市や区が開催している講座に参加しているんだけど、こんなふうにぬりえを楽しめる講座があったら、もっと楽しいのに……」
「脳トレのために絵を描いていますが、ぬりえでも脳が活性化されるのなら、ときにはぬりえの講座などにも参加したいですね」などと言う参加者もいました。
色えんぴつを手にすると、気持ちは少女の頃に戻ります。  

 また、この日、金子館長は、スタートに際し、
「今回は同系色で仕上げてみましょう。ドレスなど、いちばん面積の広い部分からぬって、色をまとめていきましょう」とアドバイス。
 この説明に、「なるほど、ちょっとした工夫で統一感が出る。こうしたことは、大人だからできる楽しみ方かもしれませんね」と納得する方も。
 さらに、みなさんを感心させたのが、金子館長の “パステル使い”。パステルをカッターで削って粉状したものをぬりえの上に落とし、それをティッシュペーパーで軽くこするようになじませると、普通にぬるよりもぼかしが効いてニュアンスのある仕上がりになるのです。
 パステルの使い方については、このサイトでもたびたび紹介してきましたが、実際に目にすると、そのテクニックに感心。「ぼかしを使うと背景もきれいに仕上がるし、女の子のホッペも、まるで頬紅をぬったように、ほんのり可愛く表現できる」と大好評でした。

上:アドバイスどおり、いちばん広い部分であるドレスの色からぬっていきます。下:パステルを上手に用いることで、背景が手間をかけずに美しく完成。

「デコる」新鮮な喜びに目覚めて

 ぬり終えた後、いよいよデコる作業に入るのですが、ここからは参加者全員が初体験。用意されたレースやスパンコールを前に、ちょっと戸惑います。“ぬりえという平面の世界と布やビーズなどの立体物をどのように組み合わせたらいいのか……”との戸惑いです。
 しかし、そこは人形遊びなどに精通している女性たち。会場内に展示されたデコぬりえの見本を眺め、金子館長の説明によって要領を得ると、ボンドやカッターを手に、ドンドン、デコり始めます。
 デコるためのパーツは、金子館長が、赤、ピンク、青、緑など、色別にまとめて用意してくださっていたのですが、なかにはレースの花模様をはさみで切り取って、独自のパーツを作った参加者もいました。
左上:カッターを使ってレースをはさみ込むテクニックを、金子館長は、ひとりひとりにていねいに伝えていきます。右上:展示されているデコ作品を参考にする参加者も。左下:効果的なパーツ使いについては、ぬりえの上に実際に置いてみて考えます。
「ぬる」作業に慣れ親しんできたみなさんにとっては、「はる」作業のほうが新鮮だったようで、一挙に会場の雰囲気が盛り上がります。
「自分のぬったぬりえが急に華やかになって嬉しい!
「デコぬりえには、子どもの頃にやったぬりえとは、違うワクワク感がありますね」
「はるときに手先に神経が集中しますから、 集中力が高まる感じがします」
 デコぬりえに関する感想が次々に飛び出します。
 完成後は、みなさん、新たな体験に大満足の様子で、金子館長が「最後に、ご自分のサインを書き添えてくださいね」と言うと、「とてもきれいに仕上がったので、家に帰って、落款を押します」という人も。
デコ初挑戦とは思えないほど、どの方のデコぬりえも素敵に完成しました。
「エキスポS65+」では、より多くの情報発信を目的に、さまざまなセミナーを用意。そのため時間に制限があり、1時間という、デコぬりえをするには、やや不十分ともいえる持ち時間で完成までこぎつけなければなりませんでした。ですから、みなさん、ゆっくりパーツを選んだり迷ったりする時間がなく(じつは、この時間がいちばん楽しいんです)、なかには未完成のまま、お帰りになった方もいらっしゃいました。
 しかし、こうした方たちから、意外にも嬉しいご意見をいただくことに――。
「うちに帰って仕上げる楽しみができました!」
「持ち帰ってやるときに、 お友だちにもデコぬりえの楽しさを伝えます
 みなさん、ご協力、ありがとうございました。
 デコぬりえに興味をもった方は、ぬりえ美術館で毎月催されている「大人のぬりえサロン」にも、ぜひ、参加してみてくださいね。