喜能会之故真通きのえのこまつ』とは

 文化十一年(1814年)、葛飾北斎.が描いたとされる、上中下三巻揃えの艶本(枕草紙)。
 日本で最も有名な春画(枕絵)、「海女と蛸」が絡む図は、この作品集の下巻に収められている。
 全巻、見開きで一図ずつ独立した濡れ場が描かれており、背後の空白部分が登場人物のセリフで埋められているのが特徴。
 各巻の扉には美人大首絵が、最終ページには扉絵で描かれた女性の大開絵(おおつびえ)と呼ばれる、女性器のアップが描かれている。
 半紙本と呼ばれる、半紙を二つ折りにしたサイズの本なので、原本の小ささに驚かれる人は多い。
 タイトルの『喜能会之故真通』は「甲子子祭(きのえねこまつり)」、あるいは「甲子待ち(きのえねまち)」の文字変えで、上中下巻それぞれ使われている漢字が異なっている。甲子子祭は民間信仰の一種で、甲子の日の夜、大豆と黒豆と二股大根(ふたまただいこん)を供え、子の刻(23時〜1時)まで起きて語り合い、大黒天を祭る行事。
 大黒天は、商売繁盛、子孫繁栄の神であるとともに、男根の象徴として、男女和合の神でもあったため、このタイトルがつけられたと思われる。
 序文に「紫雲庵、雁高(しうんあん、かりたか)」という、北斎の隠号で署名があるため、北斎の作品とされているが、北斎から隠号を譲り受けた渓斎英泉(けいさいえいせん)を軸に、北斎含め北斎一門の誰か、もしくは北斎の娘・葛飾応為(おうい)との合作とする説が有力である。