BOOK PEOPLE × 本の窓
日本外交を考えていただくために
外交の舞台裏や秘話をお話しします
 今年は安倍首相の訪ロが予定されていたり、アメリカの大統領選挙もあります。日本の外交も大きくクローズアップされることでしょう。私は国民の皆さんにも、外交についていろいろと考えていただきたいと思い、『外交の大問題』という本を上梓しました。
 私が北方領土返還交渉の最前線に立っていた頃、「外交は票にならない」とよく言われたものでした。しかし、外交というのは、今や国民生活を守る大きな手立てです。北方領土問題や竹島の問題だけではありません。最近では、TPP交渉で対応が迫られる農産物自由化の問題だって、外交案件です。また、少し前の話で言えば、郵政民営化だって、国内問題のように見えますが、アメリカが要求してきたことを小泉内閣が受け入れたわけで、これも外交問題だったと言えなくないのです。このように外交というのは、国民の皆さんの暮らしに直接かかわっているものなのです。
 それでは、この外交というもの、これは何か。私は、外交、正確に言えば外交力はイコール人間力だと思っています。よく外交は「フェイス・トゥ・フェイス」、「ハート・トゥ・ハートだ」と言われます。人間関係が一番重要なんですね。そして同時に外交は、積み重ねなのです。
 このことを、私は北方領土返還交渉を例にとって、本書で説明しています。今、日本とロシアの関係は、私が外交の最前線にいた頃と比べると、停滞しています。私や、当時外務省にいた、佐藤優さん、東郷和彦さんといったロシアとの外交を担っていた人たちが「鈴木宗男事件」でパージされた結果、「空白の十年」と呼ばれる、日露関係の停滞の時期を招いてしまいました。
 しかし、以前は違いました。日本とロシアの関係が良い時期があり、北方領土四島のうち、二島は返還間近なところまで来ていたのです。ここにいたるまでの経緯をわかりやすく書いていますから、ぜひご覧いただければと思います。鬼籍に入られましたが橋本龍太郎元首相と小渕恵三元首相、それから森喜朗元首相が、いかに努力され、返還間際のところにまで駒を進めたのか。そして、なぜ、歴代首相の努力が水泡に帰したのか。コツコツと長い時間をかけて積み重ねたものが、ミスを重ねることで台なしになってしまう。そのことも隠さずに書きました。
 もちろん、私自身の経験も載せております。私は、プーチン大統領と何度か会談していますが、初めて「さし」で対談した時、あることを私がお願いする立場だったのですが、途中まで会談は不調でした。しかし、先に述べた、「ハート・トゥ・ハート」、これで打開したんですね。お互いの気持ちをぶつけてわかりあうことが大事なんです。このあたりをぜひ、読み取っていただきたいのです。
 それから、危機管理に関して、外交官や政治家、とりわけ大臣や内閣総理大臣の判断が極めて大きいものなんだということもおわかりいただけたらと思います。
 昨年、「イスラム国」に邦人男性二人が拘束され、今年に入って、二人とも命を絶たれました。「イスラム国」は、本当に残虐な、無法者の集団です。だから、「邦人男性二人がなくなったけれども、ある意味で仕方がなかった」などと、思いがちだろうと思います。
 しかし、なぜ救えなかったのか、検証しないといけません。私が政治の中枢にいた頃、中央アジアのキルギスで、邦人誘拐事件が起きましたが、この時は救出できたのです。その時と今回では何が違ったのか。ぜひとも、本書を読む中で皆さんにも考えていただきたいところです。
 巻末に佐藤優さんとの対談も載せていますが、佐藤さんが外交上のきわめてデリケートな話もされています。外交官時代、インテリジェンスの第一人者だった佐藤さんの分析力は、今も刮目すべきものがあります。この佐藤さんの現在の国際情勢の分析にもご注目していただければと思います。
  • 『外交の大問題』
    鈴木宗男/著
    定価:760円+税
    小学館新書 208ページ
    ISBN 978-4-09-825236-7
    詳しくはこちら
  • 本の窓
  • 豪華執筆陣による小説、詩、エッセイなどの読み物連載に加え、
    読書案内、小学館の新刊情報も満載。112ページの小さな雑誌で
    驚くほど充実した内容。あなたの好奇心を存分に刺激します。
自著を語る1

鈴木宗男 『外交の大問題』
すずき・むねお
1948年、北海道生まれ。83年、衆議院議員に初当選。その後、第二次橋本内閣で北海道・沖縄開発庁長官、小渕内閣で内閣官房副長官を務める。2002年6月、あっせん収賄容疑で逮捕。05年8月、新党大地を結成。10年9月、実刑判決が確定し、12月に収監。11年12月、仮釈放される。現在、政治活動や講演活動を精力的に行う。