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BOOK PEOPLE × 本の窓
  • 自著を語る2
    角野卓造
    『万事正解』
  • 2018.1
ワガママでいい
 人は見かけによらない、とよく言うが、その言葉は私にも当てはまる。
 一九九〇年に始まった『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)は、今もスペシャルドラマとして続いているが、私はこのドラマで、妻(泉ピン子)と姑(赤木春恵)にはさまれた中間管理職のような存在である「小島勇」を演じている。やや頑固だが、妻には頭が上がらない。「中華 幸楽」と家族を必死に守ってきた男だ。
 このイメージもあって、世間から「いい人」と思われている節があるのだが、決してそうではない。ひと言でいうと、ワガママなのである。役者をやっていることからして、ワガママである。
 職業だけではない。人生すべて、指図されるのが嫌いである。好きなものを食べ、好きなように酒を飲み、好きなものを身に付ける。「オレはこういう生き方しかできねぇ」と、開き直って六十九年、生きてきた。
 好きなようにやるには、つるんでいては支障を来す。他人に引っ張られてしまうからだ。たとえば旅、居酒屋……。こうしたことは、基本ひとりだ。四十年になろうとしているが、妻ともお互いに干渉しあわない。夫婦であっても「ひとり」の時間を確保する。
 という好き勝手なワガママ人生の一端を、ポロリと漏らしたら、「本を作らないか」と勧められた。
 その人いわく、退職後の高齢者たちが人生に汲々としているように見えるというのだ。「趣味を作らないといけない」「友だちがいないとだめだ」と自分を追い込んで、人生を楽しめていない。そう言われてみれば、私は人生を楽しんでいる。それもこれも、周囲を気にせず、「こういう生き方しかできねぇ」とワガママに生きてきたからなのだが……。しかし、「こんな生き方で楽しくやっているんだ」と思ってもらうのも悪くはないかもしれないと思い始めた。ただし、年を重ねたというだけで高所から人生を語るのはもってのほか。何より他人様に語るような波瀾万丈な人生を生きてきたわけでもない。迷ったが、これも縁だと引き受けることにした。
 正直に言うと、私は仕事を断ったことがないのである。もちろん、事務所の段階でお断りしている案件もあるだろうが、私のところまで持ち込まれた仕事は、どんなことでも首を縦に振ってきた。俳優という存在は、オファーがなければ成り立たない。仕事が来ること自体、ありがたいのである。ゆえに来た球は何でも打ってきたし、どんな仕事であっても、全身全霊で向き合ってきた。その結果が今の自分である。
 というわけで、人生で初めてのエッセイができあがった。ひとり居酒屋の楽しみ方、夫婦のあり方、趣味、京都への旅、仕事の仕方、息子との関係、これからの人生……。思いつくままに、自分が日頃、楽しんでいることをさらけ出してみた。
 ひとつ気づいた。私はどんな結果であっても、人生を後悔したことがないのである。たとえ彼女にフラれても「万事正解!」と前に進んできた。
 読んでいただいた方にとっても「読んで正解!」といきたいところだが、そこまでの責任は取れない。
  • 『万事正解』
    角野卓造/著
    小学館・刊
    定価:本体1,200円+税
    四六判 208ページ
    大好評発売中
    ISBN 978-4-09-388574-4
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