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BOOK PEOPLE × 本の窓
  • 自著を語る1
    梵宗英
    『徳川家に伝わる
    徳川四百年の裏養生訓』
  • 2018.2
家康から受け継いだ「健康遺伝子」
 このたび、『本の窓』に二十六回にわたり連載した歴史エッセイ「長生き将軍 短命将軍」を、一冊の本にまとめることになりました。
 本書は、これまであまり知られていなかった徳川家に伝わる様々な養生訓や、歴代将軍の健康にまつわるエピソードを中心に紹介しています。さらに、戦乱の世を生き抜いた名だたる武将や姫君達、徳川将軍の家族や家臣達、明治初期の要人達の健康法や健康観、昭和四年生まれの私が実践している健康法なども、随所に盛り込みました。
 歴代徳川将軍の健康観や健康法を語る時、中心になるのは、なんといっても家康です。江戸時代の平均寿命は三十〜四十歳代だったようですが、家康は天下を取る前から人一倍健康に留意し、数えで七十五歳という長寿をまっとうしました。
 関ヶ原の戦いの時、家康は五十九歳でしたが、まだまだ充分に元気でした。それから大坂の陣までの十五年間に、様々な国の制度を整えて徳川幕府の基礎を築き、息子の秀忠に将軍職をバトンタッチし、六十歳前後でもうけた子供達を御三家に据え、孫の家光を三代目後継者に指名し、大坂城攻略後にどうするかまで考えていました。
 大坂夏の陣に出陣したのは七十四歳の時。二十一世紀の今でも、こんなに元気な人はいないのではないかと思う働きぶりです。
 そして大坂の陣の後、仕事の総仕上げといえる武家諸法度と禁中並公家諸法度を制定し、その翌年に後顧の憂いなく世を去りました。まさに大往生。理想的な人生の終い方だったと思います。
 江戸時代には、三十一歳の平均余命が男女共に三十年を超えていたというデータもあります。無事に壮年期を迎えれば、当時の平均寿命を大幅に上回る長生きができたわけです。
 今や、日本人の平均寿命は男女共に八十歳を超え、三十歳の平均余命は男性が五十一・六三年、女性は五十七・六一年。老いへの焦りをなくして長い人生を充実させるには、壮年期からの心身の健康をどう保っていくかを考える必要がありそうです。
 家康にも老いへの焦りはあったはずですが、「天下を平定し平和な世の中をつくる」という大目標が精神面を支えていました。「高齢化社会のヒーロー」とも言える家康の生き方は、現代人にとって大いに参考になるでしょう。
 徳川家は、将軍家の流れを汲む徳川宗家、最後の将軍・徳川慶喜家(明治三十五年創設)、御三家(尾張・紀伊・水戸)、三卿(田安・一橋・清水)の八家あり、いずれも途絶えることなく続いています。三河の松平郷(現・愛知県豊田市)にいた頃から一族同士で勢力争いをしなかった穏やかな気性に加え、家康から受け継いだ「健康遺伝子」のおかげで、徳川八家は今日まで元気にやってこられたのかもしれません。
 ちなみに、歴代徳川将軍の長寿トップ3は、当時としては珍しく肉を好んで食べた「肉食将軍」慶喜(享年七十七)、「元祖健康オタク」家康、万全の健康管理と強精剤の愛飲で五十七人もの子をもうけた「オットセイ将軍」家斉(享年六十九)です。
 サプリメントもスポーツジムもなかった江戸時代、彼らは心身の健康を保つために、どんな養生法を実践していたのでしょうか。歴代将軍の健康度は? 庶民の健康観は?
 本書でこれらを知ることが、「健康とは何か?」を考え直すきっかけとなり、読者の皆さんが心身共に健やかに愉しい毎日を送るためのヒントになれば幸いです。
  • 『徳川家に伝わる
    徳川四百年の裏養生訓』
    梵宗英/著
    定価:本体1,700円+税
    小学館・刊 四六判 320ページ
    大好評発売中
    ISBN 978-4-09-388594-2
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