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卵子老化

文: 東小雪
東小雪
東小雪

LGBTアクティビスト。元タカラジェンヌ。2013年、TDRで初の同性結婚式を挙げ話題に。TBS『私の何がイケないの?』、テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』、NHK Eテレ『ハートネットTV』等メディア出演多数。著書に『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(講談社)、パートナーの増原裕子さんとの共著『同性婚のリアル』(ポプラ社)、『レズビアン的結婚生活』など。最新刊は、同じく共著の『女どうしで子どもを産むことにしました』(KADOKAWA)。

 

産みどきっていつ?

31歳、結婚4年目に突入した私の目下の関心事は、子どもの産みどきです。(結婚と言っても、今の日本の法律では同性婚は認められていないため、婚姻届を出しても受理されません。同性のパートナーと結婚式を挙げた日を「結婚記念日」としています。)

パートナーと小さな会社を経営するようになって、この4月から4期目。30代になって精神的にも少しは成長し、フリーランスとしての仕事も安定してきました。そうなってくると、仕事で担っている責任も大きくなり、20代の頃よりもずっと仕事が楽しくなってくる。

一方で、ここ数年パートナーと子どもを持つ計画についてもずいぶんじっくり考えてきました。8歳年上の彼女がまずは産むことに挑戦しているけれど、「いつ産むか問題」には私自身も直面しています。

自分にとっての産みどきを考える中で頭から離れないのが、「卵子老化」の現実。「卵子が老化する」と騒がれ始めて早数年。「生理があるうちは産めると思っていた」と嘆く、不妊治療中の40代女性の声を雑誌の特集などで目にする度に、「まだ31歳だから大丈夫」なんて余裕ぶっている場合じゃないと、真剣に思います。

いくら社会が晩婚化して初産の平均年齢が上がっても、医学的な出産適齢期はそう簡単には変化しません。35歳くらいを境に着床率は下がり、流産率や胎児の染色体異常の発生率は確実に上がっていきます。

これらの事実を知識として知っておくことはとても大切。女性が自分の人生を主体的に選んでいこうとするときに「知らなかった、、、」となるのは残念すぎます。卵子老化は知識としてもっと広まってしかるべきだと思います。女性はもちろんですが、男性にも。しかし、最近この「卵子老化」をめぐって、私の頭の中ではモヤモヤが止まりません。

国から産めと言われるのは嫌だ

2016年の千葉県浦安市の成人式で、市長が新成人に「出産適齢期の皆さんに期待」と発言。
2月には、大阪市の市立中学校の校長が全校集会で「女性にとって最も大切なことは子どもを2人以上産むことで、仕事でキャリアを積む以上に価値がある。子育てをした後に大学で学べばよい」と発言。

産む・産まないって、成人式で言われなきゃいけないようなこと? 学校でそんなふうに教えられるべきこと?

少子化が大きな社会問題となっている今、社会からの「産め産め圧力」の高まりを感じているのは、きっと私だけではないはずです。もともと出産は国の政策と密接に関わっているものだとはいえ、最近はあからさまな空気や嫌な気配をどうしても感じてしまいます。「産む・産まないは私が決める。私だけが決めていいことなんだ」ということを、私はあらためて声を大にして言いたい! もし学校で教えるのだとしたら、「いついつまでに何人産みなさい」ではなく、「産む・産まないは個人の選択」ということではないでしょうか? 様々なライフスタイルがある中で一人ひとりがどんな人生を選択できるか、教育現場ではむしろそれを応援する姿勢を示してほしいと思います。

卵子凍結はどう思う?

浦安市は少子化対策の一環として、健康な若い女性の「卵子凍結」に助成金を出す試みを開始しました。民間でも、希望する女性社員の卵子凍結に費用補助をする会社が日本にも出てきました。卵子凍結という選択肢は、「FacebookやGoogleなど、アメリカ西海岸のIT企業で働く一部のキャリア女性だけのもの」ではなくなりつつあります。

自分の遺伝子を残したいという欲求は、個人差はあれど、生物として自然で本能的なものだと思います。今パートナーはいないけれど子どもだけは先にほしい、という人も多いはず。

「医学的な産みどき」は、人生が一番楽しくなってくる時期と重なります。20代前半の頃より不安とのつきあい方も上手くなり、自分と折り合いを付ける方法もわかってきて、公私ともに充実し始めるとき。だからこそ自分の卵子を若いうちに凍結して、卵子の時間を止める。そして、20代〜30代前半は仕事に集中して、妊娠出産はもう少し後になってから! パートナーもじっくり選んで、キャリアも積んで、結婚して、出産はその後で…というシナリオは、働く30代の実感として、とても理にかなっているように思えるのです。

しかし卵子凍結は、あくまでも卵子を凍結するだけ。40代になってからの妊娠出産を保証するものではもちろんないし、身体的な負担に加えて、やっぱり費用もそれなりにかかります。

新しい倫理的な課題も

妊娠したら妊娠したで、直面しなければならない倫理的な課題も。いわゆる「新型出生前診断」以外の一般的なエコー検査などでも、胎児の病気や障害についてわかることがあります。「出生前診断」という認識はまだそこまでないかもしれないけれど、妊娠すればだれもが出生前診断について考えなければならない当事者になると言えます。胎児に障害があるとわかったときに、どうするのか?

技術の進歩により胎児のいろいろな情報がわかるだけに、そして選択肢があるだけに、悩みが深まる場合がありますよね。

卵子老化、産みどき、キャリア、胎児の障害の有無、、、
ぐるぐるぐるぐる考えた末には、最後は「たまごクラブ ひよこクラブ」くらいの明るさとテンションで臨まなければ、子どもを産むことなど恐ろしくてとてもできないと思ってしまうのです。

それでも産む? 産まない? 産むとしたらいつが最適?

女性の産みどきについて考えるとき、忘れてはならないのは「産まない女性」の人生の尊重です。自然妊娠も不妊治療も、人生の中で子育てをしない女性の生き方も、同じように尊重されてほしい。多様な生き方が大切にされる社会こそが、産みたい女性が本当の意味で安心して子どもを産み育てられる社会だと思っています。