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赤ちゃんはどこから来るのか、いつ知った?

構成: 牧村朝子

「全人類、誰とでも妊娠可能」。そんな技術が将来、現実のものになるかもしれません。
2015年の第19回文化庁メディア芸術祭では、実在する同性カップルの遺伝子から生まれうる子どもをシミュレーションした作品「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」で、MITメディアラボ・デザインフィクション研究室所属のアーティスト、長谷川愛さんが優秀賞を受賞しました。今回は、制作アドバイザーを務めたアーティスト/MITメディアラボ助教のスプツニ子!さんと、作品へ妻とともに遺伝子を提供した文筆家の牧村朝子さんを交え、「産む」ことのこれからを語り合います。(全3回)

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  • スプツニ子!スプツニ子!

女の子向けのおはなしは、いつも結婚オチで終わった

子どもの頃、「いつか自分はお母さんになるんだ」って思ってましたか?

いやあ、漠然と「なるものじゃないかなあ」って。けっこう、そうじゃないですか? 子どもの頃って、「大きくなったらどんなお母さんになるの?」とか聞かれるから。

ですよね。

あと、ディズニー映画だって、ひたすら結婚してるじゃないですか。

(一同笑)

ほんとそれ、マジで!

うん、うん、うん……。

母がイギリス人で、ディズニー映画をよく観せてくれて。ハッピーエンディングは結婚! みたいになってるから(笑)。それ観てると、そうかな、と思う。なので、あの……矢島太郎くん※。

誰?

同じ保育園に矢島太郎くんって子がいたんですけど、彼と結婚することに決めてたんですよ。もう、3歳児くらいのときに。

(※注……本記事では念のため仮名としてあります)

10代からの“母性本能”

私も同じで、ずっとお母さんがバービー人形の服をいっしょにつくってくれて。

すごい!

で、「あなたもこうやって娘と裁縫するといいんじゃない?」って言われてたんですよ。なぜか娘ができる想定で。あと、中学の頃とかに、私も(親戚の子の)おむつ換えたりしてたので、そこからもうすでに母性本能がめっちゃ刺激されまくってて。

愛さんの母性本能がですか?

そう。まあ、そんな赤ちゃんたちがもう立派なギャルに育ちましたよ(笑)。

(一同笑)

こないだ新年会で衝撃でしたよ。

「手作りの服とか着ねえよ」みたいな。

「買うよね」みたいな。

「マルキュー(SHIBUYA109)行くよね」みたいな。

じゃあ、愛さんは、ご自分の中には母性本能があるって感じていらっしゃるんですね。

そうですね。

お母さんになるっていうことは、子どもを産むわけじゃないですか。赤ちゃんはどこから来るか、って知ったのは何歳でしたか? どういうきっかけでしたか?

赤ちゃんはどこから来るの?

私はすごく早くて、たぶん小学校1年生くらい。

早っ!

6歳!

その……男の人と女の人がセックスをすると子どもができるっていうのを知って。

えっ、そのさあ、セックスっていう概念を、どういう感じで受け止めてたの? その時点で。

まあ、テレビとか、あとエロ漫画とか……。

6歳児が!?(笑)

けっこう情報中毒で、図鑑を本気で読み込んでるから、生殖のページも読んでて。それで、「いちゃいちゃすると子どもができる!」っていう推理をして。

でも、図鑑にいちゃいちゃはないじゃない。

「図鑑とエロ漫画からの推理によると、もしかしてこれは!」みたいな。で、それを、クラスメイトに説いて回って。

説いて回るか!?(笑)

ただ、なんかそれ、信じてもらえなくて。「そっちのパパとママもやったってことじゃん!」って言われたときに、「あっ……!」って。

ははは!

でも、(囁き声で)「いや……やったんだよ」って。一生懸命説いて回ってた。

早かったね。

愛さんは知ってました?

結構遅かったかも。エロ本は読んでた気がするけど、それはそうだとわかってなくて読んでたし。

エロ本って、何歳のときですか?

10歳以前だったな。

だ、大丈夫か?

これ言っていいのかなあ。で結局、性教育でそういうのは知ったけど、って感じ。

あ、ちゃんと性教育で知ったんですね。

そう、うちすごい厳しかったから。

厳しいおうちは10歳以前の娘がエロ本読んでたら止めるぞ!(笑)

わかってないと思われてたんですよね。で、実際わかってなかったから。まあ、ムラムラは感じたけど。

6歳児だって、性欲ありますよね? だから漫画とかにムラムラするんだけど、そこに描かれるエロって、妊娠・出産から切り離されたエロじゃないですか。私が子どもだったときは、女の体っていうのは自然に妊娠するものだと思ってたの。胸が膨らむのと同じように、背が伸びるのと同じように。

お~。

みんな聖母マリア様だと思ってたの。みんな処女懐胎するんだと思ってたの。

すごい!

ちゃんと性教育をしてもらえたり、図鑑が身の回りにあったりっていうのは、幸せですよね。

「結婚=奴隷になること」?

でもうちは、結婚に対してあまりいい夢が見られなかったなと思ってて。田舎はほんとに、女の人が奴隷みたいに使われるので。

奴隷みたいにされるってどういうこと?

たとえば友達が結婚して、長男の家のお嫁さんに入ったときに……。

「家に入る」っていうしね。

そうなの。で、「妹が出産するから会いに行きたい」って(嫁ぎ先の家に)言ったら、「あなたはもうウチの嫁なんだから前の家とは関係を持つな」みたいな。で、「ウチの家事を全部しなさい、出かけたいときはお金を置いていけ」と。ほんと、お手伝いさんみたいな扱いなんですよ。

この2016年に!?

あと、私が男の子を呼び捨てにすると怒られたり。

逆(男が女を呼び捨て)だとどうなの?

別に。

え~!?

絶賛続行してるんですよ。男のために世界はある、みたいなことが。

今まで私はそういうことを「終わった」扱いしてきたんですけど、終わってないんだなあって思った。

いるんですよ。田舎にはいて、ネットで探してもけっこうある。

「Yahoo!知恵袋」や「発言小町」って、都会と田舎の意見が混在するから……。

おもしろい、それ!

うちの母は、「自己実現したいなら、自力でメイドを雇えるくらい稼げるようになってから結婚・出産しろ」って教えでしたね。あとはまあ、「もし女性が好きだったら、教えてくれてもいいのよ」みたいな話をしてくれた。

私、それいいと思う。

でもなんだろうな、スプツニ子!さんのお母様にとって、夫の収入を頼って産むことは、母として、妻としてしか生きられなくなることを意味していたわけよね。愛さんのお母様は、女が奴隷として扱われる現状の中、「嫁が家に入る」っていう表現をするような環境で子どもを産んだ。なんか……「どうしてお母さんは私を産んだんだろう?」って考えちゃいませんか。

……なんででしょうね。「結婚したら子どもを産むのは当たり前でしょ」みたいなプレッシャーもあったらしく。私の母はもう兄を産んでいたし、兄は父親が違って、金髪碧眼の男の子なんですけど。特に聞いたことないですね。なんだろう。

ね。私のお母さんも、産んだ理由を、言わなかった気がするな。それが普通だからだよね。

ん~。

なんで産んだかより、産むといいことあるわよアピールがすごかった。

え~! 具体的には?

【次回告知+展覧会告知】

“健康法として語られる出産”に、“出産体験マシーン”……!? MIT所属アーティストと「産むこと」に斬り込む鼎談、次回『「お父さんでも産める日」は来るのか?』は3月22日更新です!

★おしらせ

長谷川愛さんの作品「(不)可能な子供」を美術館でご覧になれます!

森美術館「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」にて、文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞作「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」が展示されます。2016年3月26日(土)から7月10日(日)まで。詳しくはこちらから!