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「お父さんでも産める日」は来るのか?

構成: 牧村朝子

「全人類、誰とでも妊娠可能」。そんな技術が将来、現実のものになるかもしれません。
2015年の第19回文化庁メディア芸術祭では、実在する同性カップルの遺伝子から生まれうる子どもをシミュレーションした作品「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」で、MITメディアラボ・デザインフィクション研究室所属のアーティスト、長谷川愛さんが優秀賞を受賞しました。今回は、制作アドバイザーを務めたアーティスト/MITメディアラボ助教のスプツニ子!さんと、作品へ妻とともに遺伝子を提供した文筆家の牧村朝子さんを交え、「産む」ことのこれからを語り合います。(全3回)

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健康法扱いされる出産

母は、「産んだら体質変わった!」って言ってて。いろいろ健康になったって。

健康法としての出産(笑)。

そう。で、私もずっと生理痛がひどかったから、子ども産んだら、これがよくなるんだなあみたいな、早く産みたいなあくらいの勢いはたしかにあって。まきむぅさんは?

私も、“産むといいことあるわよアピール”っていうのはされましたよね。うちは、「健康法アピール」って言うよりは、「スピリチュアルアピール」でした。

お~。

母が言ったのは、「女の哲学者がいないのってどうしてだかわかる?」ってこと。「女はね……産む瞬間にすべてを悟るのよ」って!! すげえ霊能者キャラだったんですよ。

それ言われたら産みたくなりますね。

なんか、「産んだ女の世界」と「産んでない女の世界」があって、産んだらあんた、一段上にあがれるのよ、みたいな。

ほんと、そういう言説はよくありますよね。たしかに。

そんな世界あるのかなあ、と思うけど。

産んだかどうかが女を分ける?

今日、「産むとは」っていうことを話すのに、私たち全員産んでないよね。

それは引け目を感じている?

女として発言するときに、「産んでる方がどうぞ発言してください」みたいな。

「私は知らない世界なんで」って。

胸を張れない感じはします。

そうそれ、すごく思うの。私の周りには、“産むことってめっちゃスピリチュアルだよ説”の論者がたくさんいるんですよ。だからね、なんかもう、産んだことある人たちがシャーマンに見えるの! なんか、「絶対私の見たことない世界を見てるんだ」みたいな。すごくうらやましいの。

うん、うん。うちのお母さん言ってたけど、「妊娠中、無条件にハッピーだった」って。

そういうの、そういうの!!

でも、お母さんはきっとラッキーな例だったのね。人によっては産後鬱とかあるから。

言われてみればそうね。きっと、産んで何が起こるのかは、それぞれの身体、それぞれの考え方、それぞれの状況によって違うはずなのに……言ったらそれぞれの人生なはずなのに、なんでこんな、産んだ産まないで分かれてる気がしちゃうんだろう私、って、いまお話ししてて思いました。

プレッシャー与えられるし、そういうものだっていう刷り込みを何回もフィクションや教育でされたりするしね。

うん。子どもに対して無責任な物言いだけども、子育てをしたいんじゃなくて、私は産みたいんだと思う。いまのところ。産みたい気持ちはすごくある。

それはわかります。産んでみたい、っていう。

じゃあ究極のところ、代理母でもできちゃうってことですよね。自分の子どもじゃなくても。

代理母、自分はなれると思う?

うーん……。

でも、代理母って、やっぱりこう、産んだときに、精神的なつながりがきっとできちゃってて……。

そう、だって、(下腹部を指さし)ここから出てくるのよ。十月十日いっしょで。愛おしいと思うわよ。

ね。その子を「はい、あなたのです」って(遺伝上の親に受け渡すことが)できるのかっていうのは、ほんとにやってみないとわからないから。ほんとに辛いかもしれない。

そうなのよね。

まだ、姉の代わりにとか、家族の中での代理出産だったらいいのかもしれないけども。「はい、もう、ここで会えません。さようなら」だと、ちょっと私は難しいと思う。

辛いと思うの、それ。

でも、それはそれで体験としてやってみようかなあって気もしてきますよね。無責任なこと言ってるかもしれないけども、それはそれでどんな気持ちかなっていうのは興味がわいてきます。実際、いま代理母やってる人も世界中にたくさんいて。やっぱり、アーティストとして、そういうイシューを扱ってると気になりますよね。産んでみてさよならしなきゃいけなかったらどんな気持ちだろう……とか。

スプツニ子さんは、生理マシーンをおつくりになったじゃない。お産マシーンはつくらないんですか?

スプツニ子!さんの作品「生理マシーン、タカシの場合」(2010年)

出産経験マシーン

そういう話はけっこうされるんですけど、でも、出産の激痛を体験する機械ってもう結構あるんですよね。

そうなのね!? ええっ、どこに何をされるの!?

たぶん、電流を流すくらいで……。

電流をどこに流すの!?

局部に……。

YouTubeで探すと結構ありますよ。

あるのー!?

そう。海外で、男の人がすごい、「ウワアアアア!!」とか絶叫してるやつ……。

ははは! まじうける!!

けっこうある。

Birth Simulator on 92.9's Heidi, Will and Woody

でもそれって、どれくらいリアルなのかなあ?

パフォーマンス要素もけっこう強いと思うんですけど。あとは、妊娠中の妊婦さんの重みを体験するウェアラブルとかも、けっこうまじめに、男性教育のためにつくられたりしています。

The Try Guys Try Pregnancy Bellies • Motherhood: Part 1

「お父さんでも産める日」は来るのか?

昨日ね、私、法律の先生にお話を聞きに行って。彼によると、「これから代理母っていうのは、倫理的な問題で難しくなってくるだろう」と。それよりも、人工子宮、もしくは男性に子宮をつくるというか、男性が妊娠するというテクノロジーがこれから来るだろうって話をしていて。

それ、牛とかが産めないのかな?

人間が牛を産むってこと?

逆、逆。

牛が、人間を産むっていうこと!?

そうそう。

えっ……そ、それは……

私は前、考えたんだけど……

考えたんだ!?

うん。私はやりたくないなって思った。やっぱりね、絶対、なんだかんだ言って、混ざるんだよね。

あ、牛の遺伝子が?

うん。私も前、イルカを妊娠してみようって言って、色々リサーチしたんだけど……子どもと親って、通ってんのよ。

長谷川愛さんの作品「I Wanna Deliver a Dolphin...」(2013年)

たとえばいま、母親の血を使った出生前検査(※)があるのね。それができるのは、子どものDNAが、母親の血中にほんの少し流れてるからなのよ。っていうことは、やっぱ(牛が人間を妊娠すると)牛の細胞なり、何かが子どもに入っちゃうかもしれない。それだったらやっぱ、父親が妊娠できないかっていう方向にいくのが、私はいいと思って。

(※正式名称を「母体血胎児染色体検査」という)

すごく現実的な路線だと、豚を使って人間の臓器をつくる技術がどんどん進んでるんですよ。腎臓とか。で、豚で臓器をつくれるんだったら、豚とか牛が人間の子どもを産むようになって人間の負担がなくなるっていう路線がいいかなって。男を妊娠させるための技術的な労力とか予算的な労力を割けるなら、牛とか豚に使いそうな気がする……かな。

でもやっぱり、その、胎教はどうなるのっていう話があって。母親がブヒブヒ言ってたらお腹の子はどうかな、とか。みたいなさあ。

ははは!

【次回告知+展覧会告知】

賛否両論ありつつも、既にできている技術はあって……? MIT所属アーティストと「産むこと」に斬り込む鼎談、次回『未来妊活! 産むことにまつわる科学技術のこれから』は3月29日更新です!

★おしらせ

長谷川愛さんの作品「(不)可能な子供」を美術館でご覧になれます!

森美術館「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」にて、文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞作「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」が展示されます。2016年3月26日(土)から7月10日(日)まで。詳しくはこちらから!