今森光彦

昆虫(むし)の地図館
日本の里山昆虫記

写真家・今森光彦が贈るフォト日記。
「環境」の視点から日本全国の
取材と撮影を続ける筆者が語る
里山にすむ昆虫の「今」を
最新の美しい写真でお楽しみください!
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今回は新潟県胎内市にある「胎内昆虫の家」を訪れました。

第6回 里山の昆虫博物館
新潟県胎内市
  • 地図
  • 田んぼや湿地が点在する新潟県胎内市の郊外。美しい里山から少し山に入ったところに、小さな博物館「胎内昆虫の家」があります。前回のハッチョウトンボ取材の折に、この小さな博物館を訪れました。

日本には、各地に昆虫館がある。昆虫館は、博物館みたいなものだけど、昆虫だけを専門に扱っているので、より充実した展示がしてあり、情報も豊かで、虫好きにはたまらない場所だ。
今回訪れたのは、胎内市の里山の中にある昆虫館、「胎内昆虫の家」だ。田園をとおって、少し森が多くなったなと思ったら、道沿いに、大きな駐車場がありその奥に建物が現れた。
いったいどんな昆虫に出会えるのだろう。はやる気持ちを抑えながら、そっとドアを開いた。

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胎内昆虫の家は、緑につつまれた長閑な里山の中にある。

蟻
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標本展示室は、ライトが明るくて見やすくなっている。

メインの展示室に入ると昆虫標本がずらりと並んでいた。見渡すかぎりの昆虫標本に圧倒される。昆虫館ならどこでもみられる部屋かも知れないが、やはり、標本は、基本中の基本。大型甲虫から熱帯雨林の蝶まで、ここでは、世界の昆虫が常時約3000種類、1万点の標本が展示してある。部屋の中央には、移動式のケージが備えてあって、土や落ち葉と一緒に生きたマイマイカブリや水槽の中にはタガメが飼育されていて、手に触れることができる。

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一番奥にあるモルフォチョウの標本。メネラウスモルフォの青色の翅がまぶしい。

蟻
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日本の蝶の展示室。標本だけでなく、生態的な解説もていねいにされていた。

蟻
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ゴライアストリバネアゲハの変異を示す(左) ミイロタイマイは、こう見えてもアオスジアゲハの仲間(中) オオルリアゲハの地理的変異を示す(右)

標本の展示には、いろいろな工夫がみられた。例えば、地理的変異がわかるように同じ箱に一種類をいれて解説がしてあった。図鑑で見るより、現物が目の前にあるとやはり、説得力がある。

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南米に棲息するミドリツノダイコクコガネ(左) ヨーロッパに棲息するキンイロオサムシの仲間(中) ニューギニア周辺に棲息するカラフルなゾウムシたち(右)

蟻
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一室すべてが、馬場博士にまつわるコレクション。

初代の名誉館長で昆虫学者の馬場金太郎博士の資料や図書や標本が展示された部屋。胎内昆虫の家に寄贈されたもの。馬場博士が採集した標本をもとに新種として記載されたババオオヨコバイの解説が興味深い。

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小型甲虫から蝶まで、馬場博士の研究の幅の広さには驚かされる(左) 展示室には、オサムシやマイマイカブリの地理的変異を地図と標本で示してある箱もあった(右)

蟻
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水槽の中で泳ぐ宇宙メダカの展示コーナー。

昆虫の家になぜメダカ、と思ったらただのメダカではなかった。スペースシャトルに乗って向井千秋博士といっしょに宇宙に行ったメダカの子孫だそうだ。感動的な出会いだけれど、個人的には、昆虫の家に展示している理由を少し説明してほしいと思う。

蟻
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カメムシの仲間、カミキリムシの仲間、蝶の幼虫、様々な昆虫が飼育されている(左) カラスザンショウを食べるアゲハチョウの幼虫(右)

昆虫の家の裏舞台も見せてもらった。ここで、館内の生態展示室や放蝶ケージに入れるための昆虫を飼育する。飼育経過などは、細かく記録され資料として保存される。作業をされているのは、主任の遠藤正浩さん。

蟻
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胎内昆虫の家の周辺には、豊かな里山がひろがる。

昆虫の家を出たら、雄大な山々と森と、美しい田園が目に飛び込んできた。最初は、こんな不便なところに昆虫館、と思ったけれど、胎内昆虫の家は、周辺の素晴らしい里山が宝物なのだと実感した。館内で勉強して、外に出たら自然の中で生きる本物に出会える。このことが一番ぜいたくなのだ。胎内昆虫の家のことをみんなに知ってほしいし、胎内昆虫の家にぜひ、足を伸ばしてほしい。きっと、新しい発見があると思う。

協力/小池啓一(群馬大学名誉教授) 
   大橋賢由 遠藤正浩(胎内昆虫の家)
蟻
  • Profile
    今森 光彦

    (いまもり みつひこ)

    1954年滋賀県生まれ。写真家、ペーパーカット作家。
    人と自然が共存する琵琶湖周辺の里山を30年以上にわたって撮影してきた。
    近年は、「ニッポンの里山」をテーマに日本全国を旅し、ここ10年で訪れた里山は、200箇所をこえる。
    一方、熱帯雨林から砂漠まで、広く世界の辺境地も取材している。

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  • カブトムシ
編集後記
  • 前回のハッチョウトンボ取材の際、同じ新潟県胎内市のフィールドに佇む胎内昆虫の家に行ってまいりました。ここは「知る人ぞ知る」昆虫の聖地。今森さんがかねてより訪れたかった昆虫館です。胎内の里山に囲まれた山の奥に、驚くほど多くの昆虫標本が展示されていました。前日に里山の取材を終えた今森さんは、この日は打って変わって室内の撮影。モルフォチョウをはじめとした世界のチョウ類、甲虫類などの美しい標本に興味津々といった趣。夢中になってシャッターを押されていました。

    (編集部・K)