今森光彦

昆虫(むし)の地図館
日本の里山昆虫記

写真家・今森光彦が贈るフォト日記。
「環境」の視点から日本全国の
取材と撮影を続ける筆者が語る
里山の昆虫の「今」。
各地に見られる昆虫たちの姿を
最新の美しい写真でお楽しみください!
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湿地で昆虫採集。さて何が見つかるだろうか!

第9回 里山むしむし合宿 その1
宮崎県木城町 木城えほんの郷
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  • 毎年8月に、宮崎県の「木城えほんの郷」の里山に子どもたちを招いて昆虫採集をしている今森さん。今年もたくさんの子が虫を求めて集まりました。さて、どんな昆虫が採れたでしょうか。

木々や田んぼに囲まれた里山の中に位置する木城えほんの郷。山間にある24,000uの敷地には、ギャラリー、カフェ、えほん館、森のコテージ、水のステージなどが設備されており、四季折々の豊かな自然が満喫できる。コンセプトは、「自然は子どもたちの感性を育む心のゆりかご」。敷地の植物などのきめ細かな管理には感心するが、もっとすごいのは、1年をとおして行われるオリジナリティーあふれる企画展や原画展。一度訪れた人は、必ず何度も足を運びたくなる夢の園だ。

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木々が影を落とす森のコテージに続く道。

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水のステージからながめる木城えほんの郷。

木城えほんの郷は、山間にあるが、標高はそれほど高くない。なので平野の生き物たちの宝庫だ。カブトムシやクワガタムシの好きなクヌギもたくさん生えている。クヌギ林は、シイタケのほだ木をとるために時々伐採したりして、農業的な活動も行われている。もともと農業用水だったところを作り変えた半自然のため池は、水がとてもきれいで、水面に緑色の山々を映し出す。渡り橋が設けられているので、ため池の中央まで行くことができる。

蟻
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田んぼに隣接した浅瀬の湿地や池には、水辺の昆虫が見られる。

私が木城えほんの郷に毎年来るようになったのは、14年前、ここで写真展を開催させていただいたのがきっかけだ。そのとき、村長さんの黒木郁朝さんと代表の森―代さんのお二人に出会い、自然や子どもたちへの熱い眼差しに感動し意気投合。それ以来、作品展は毎年つづくことになった。そのときに私のフィールドである滋賀県湖西地方でやっていた昆虫教室をここでも開催しようということになり、2泊3日の「今森光彦 里山むしむし合宿」が誕生した。

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ミズカマキリは、もっともよく見られる水生昆虫。

水生昆虫は、子どもたちに大人気。ギンヤンマ、オニヤンマ、シオカラトンボなどのトンボの仲間やタイコウチ、ミズカマキリ、コオイムシなどの水生昆虫がたくさん見られる。水辺の生き物の観察には、タモ網が必要だが、興奮して捕虫網ですくってしまい網がだいなしになることもある。

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タイコウチの終齢幼虫をつかまえた。

子どもたちは、水辺を離れようとしない。池という目に見えない小宇宙が、きっと好奇心をくすぐるのだろう。それと、水生昆虫は肉食のものが多く、鋭いあごやかまをもっていたりして姿が変化に富んでいるので魅力たっぷりだ。

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クサギに集まってくるクロアゲハやモンキアゲハを観察する。

夏の花が咲いている道の脇は、昆虫観察のポイント。合宿のある8月は、クサギが満開。クサギは、大型のアゲハチョウがやってくるので待機する。昆虫採集は、知識がある人から教わりながら、自分も新しい発見をする。

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飛翔しているクロアゲハをみごとネットイン。

蝶は、幼虫の食草や成虫の好みの花などを知っていると出会いのチャンスが増えるが、肝心なのは運動神経かも知れない。不規則な行動を狙って捕虫網をふるのは、意外に難しい。でも、この緊張感が最大の醍醐味でもある。

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セミなどの昆虫の素揚げ(左) イナゴやバッタの素揚げ(右)

恒例のおやつコーナーは、昆虫の素揚げ。「ひやー」と驚く人もいるが、一口食べれば、あとはもりもり。美味しさの虜になる。

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オオカマキリのカマのポーズをきめる(左)
蝶は、展翅板を使って翅を整える(右)

むしむし合宿では、採集した昆虫は、じっくり観察して逃してもいいし、標本にしてもいい。標本にする場合は、展翅板、虫ピン、ピンセットなどを使うが、生き生きとしたポーズを再現するには、野外での観察眼がものをいう。

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むしむし合宿終盤の授賞式。講評しているのは私。

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ライトを設営して早い時間帯は、コガネムシや小型のガがたくさん集まる。

夜の灯火採集も人気だ。えほんの郷は、斜面の見晴らしの良い場所にあるので、ライトをしかければ、このように数多くの昆虫が集まる。ただし、時期やその日の天候に左右されやすいので、よい場合も悪い場合もある。

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折りたたみの蚊帳を使った誘蛾灯(上) スズメガの仲間は、大型なので迫力がある。写真は、エビガラスズメ(中) オオミズアオは、大人の手のひらほどもあるとても豪華なガだ(下)

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今年も暑い熱い夏が終わろうとしている。それにしてもみんなの集中力と体力に脱帽。日本に、こんなにも昆虫の好きな子どもがたくさんいることを嬉しく思う。木城えほんの郷に息づくすばらし自然がこれからもずっと維持されていきますように。

「里山むしむし合宿 その2」につづく。
 ※後日更新予定。
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  • Profile
    今森 光彦

    (いまもり みつひこ)

    1954年滋賀県生まれ。写真家、ペーパーカット作家。
    人と自然が共存する琵琶湖周辺の里山を30年以上にわたって撮影してきた。
    近年は、「ニッポンの里山」をテーマに日本全国を旅し、ここ10年で訪れた里山は、200箇所をこえる。
    一方、熱帯雨林から砂漠まで、広く世界の辺境地も取材している。

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