日本の魚があぶない!? 魚類研究の第1人者に学ぶ、魚に迫る脅威とは

 夏バテの対策として昔から食べられてきた栄養価の高いうなぎ。そのイメージから夏が旬だと勘違いされることも多いが、本来の旬は冬。土用の丑の日にうなぎが食べられるようになった由来は江戸時代後期にある。あるうなぎ屋が、夏にうなぎが売れず困っていることを平賀源内に相談したところ、「本日丑の日」と書いた張り紙を出すアドバイスを受けた。丑の日に「う」のつくものを食べると、夏バテしないとされていた当時、張り紙を出したうなぎ屋はたちまち大繁盛した。それをこぞって他のうなぎ屋も真似したため、「丑の日はうなぎ」というイメージが定着したという「平賀源内説」が有力である。
 全世界の約7割のうなぎは日本で消費されているともいわれるが、産卵から成魚になるまでにコストがかかり過ぎるため、いまだ完全養殖の産業化が確立できていない。そこで現在は海外から生け捕りにした稚魚を輸入し、養殖している。実はうなぎの卵が海で発見されたのはわずか8年前のこと。日常的に口にしていながら、生態がわかっていない不思議な魚が多いのだ。

 『小学館の図鑑NEO 新版 魚』を監修する魚類研究の第1人者、井田齊氏の新刊『魚はすごい』(小学館新書)では、人知を越えた驚きの生態を持つ魚が紹介されている。約400年生きる、脊椎動物の中で最長寿のニシオンデンザメや、求愛のために体長の約16倍のミステリーサークルを作ってメスを誘うアマミホシゾラフグ。海底の砂や小石に化けるカレイなど、気が遠くなるような歳月をかけ、生存競争を勝ち抜くため独自の進化を続けてきた。
 しかし身近な魚ほど、絶滅の危機が迫っていると著者は警鐘を鳴らす。その要因として、人間による乱獲をはじめ、埋め立てや海洋汚染による生息環境の減少があげられる。さらに国外から観賞用や食用で国内に持ち込まれた生物が放されて野生化し、日本の固有種が外来生物に生息域を奪われてしまうケースもあるとのこと。

 「唯一、日本固有のコイが残っている琵琶湖にもブラックバスやブルーギルなどの外来種が移植されてしまいました。一般的にいって、狭い島が原産の生物は大陸産の近縁種と比べると競争に弱いのが通例です。コイばかりでなくタナゴ類、モロコ類なども激減しています。固有種の未来が危ぶまれます」(井田齊氏)

 実際、日本では北海道に生息していたチョウザメが絶滅している。その卵が世界三大珍味のキャビアであることから乱獲され、さらに河川改良のため生息域を狭められたのが原因である。チョウザメは繁殖できるように成長するまで15年かかるため、卵の乱獲が起こると子孫への影響は著しい。日本人の大好物であるクロマグロや、冒頭でお話ししたうなぎも絶滅危惧種に認定されている。日本は2006年に生物多様性条約を批准していて、国民も生物の多様性を維持する義務があると強調する井田氏。「魚はすごい」と思わず誰かに話したくなる本書が、普段何気なく食べている魚に目を向けるきっかけになれば嬉しい。

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