池上彰氏が語る、イスラム過激派を育てる土壌とは?

 世界各地でイスラム過激派のテロが止まらない。スペイン第2の都市バルセロナの中心街ランブラス通りにワゴン車が突っ込み、死者13人、負傷者100人以上を出した大惨事(2017年8月17日)は記憶に生々しい。爆発物や銃による犯行のほか、ヨーロッパでは、自動車を暴走させて人の列に突っ込むというテロが起きている。ドイツのベルリンでクリスマスのマーケットにトラックが突っ込んだ事件もあった(2016年12月)。

 こうしたニュースを見聞きするたびに、「イスラムは怖い」というイメージを持つ人も多いだろう。ジャーナリストの池上彰氏は、「イスラムは怖い」と思わせることこそ、過激派の手口だと言う。

 

「過激なテロが続くと、イスラムは怖い、という偏見が広まり、一般のイスラム教徒に対する差別や抑圧が高まる可能性があります。すると、一般のイスラム教徒の中に、〝なんで我々ばかり差別されるのだ〟という不満が高まる。そういう不満を持った人たちに、過激派は〝欧米のキリスト教社会は我々を滅ぼそうとしている。奴らは敵だ。聖なる戦いに立ち上がろう。聖なる戦いで死ねば天国に行けるのだ〟とささやきます。こうして過激派を育てる土壌が広がっていくのです」(池上氏)

 

「テロ」とは「恐怖」という意味。相手に恐怖を与えることで自分たちに有利な状況をつくり出すことだ、と池上氏は語る。「つまり、イスラムは怖い、と思ってしまうことが、テロに屈することになるのです」

 

 本来平和を求める宗教のはずのイスラムが、なぜマイナスのイメージで見られるのか?
 自称「イスラム国」(IS)はなぜ生まれたのか?

池上彰氏の新刊『池上彰の世界の見方 中東』(小学館)では、その理由と現在の中東の混乱を、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)からたどって解説している。

 

「ソ連が〝国境を接している国に自分たちの言うことを聞く政権をつくろう〟という勝手な都合でアフガニスタンに攻め込んだことがそもそもの発端でした。東西冷戦でソ連と対立していたアメリカは、ソ連を叩く絶好のチャンスだと考え、アフガニスタンの反政府勢力を支援した。その反政府勢力の支援に来ていたのがサウジジアラビア出身のオサマ・ビンラディンでした」(池上氏)。

 

 オサマ・ビンラディンは、イスラム圏から支援に来た大勢の若者達の名簿づくりをしていて、この名簿づくりの組織が、やがて「アルカイダ」(アラビア語で〝基地〟という意味)と呼ばれるようになった。後に反米ネットワークへと発展するアルカイダとオサマ・ビンラディンという怪物をつくり出したのはアメリカCIAだったのだ。

 その後、アルカイダがアメリカで9.11テロを起こし、それに怒ったアメリカが、アルカイダのいるアフガニスタンを攻撃。さらにブッシュ大統領がイラクをも攻撃し、フセイン政権を倒した。しかし、アメリカのいい加減な統治で、イラク国内は混乱し、内乱が勃発。その中から、さらに過激な自称「イスラム国」(IS)が生まれ、世界中でテロを起こしてきた。

 

「要するにソ連とアメリカの身勝手な思惑によって、中東の大混乱が引き起こされたということです。とりわけアメリカの責任がいかに大きいかということがわかるはずです」(池上氏)。

 

 本書では、パレスチナをめぐる「中東問題」や、石油が出る国と出ない国との格差が深刻になりつつある「南南問題」など、この1世紀にわたる中東情勢や、イスラムの戒律についても解説している。中東とイスラムの入門書としてぜひお読みいただきたい。

 

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