日本人と同じと思ってはいけない中国人の思考法


 
 中国人と接したことのある人は、想像もしないような行動をとられて驚いた経験がないだろうか? 「日本人は得てして、他国人も同じような思考回路をもっていると勝手に思い込んだまま相手に対応して失敗するのです」と語るのはITエンジニアで工学博士の麻生川静男氏。リベラルアーツ研究家で中国の歴史書にも造詣が深い。2014年に『本当に残酷な中国史~大著「資治通鑑」を読み解く~』(角川SSC新書)を刊行し好評を得た。その続刊ともいうべき『世にも恐ろしい中国人の戦略思考』(小学館新書)をこのたび上梓。歴史書の事例を現代の中国社会で起きている問題──政治腐敗、人権問題、少数民族などと結びつけて批評しているのが特徴だ。

 ちなみに『資治通鑑(しじつがん)』とは、紀元前5世紀から紀元後10世紀までの1360年余に及ぶ歴史を記述した、全部で294巻330万字にも及ぶ中国の歴史書。日本での知名度は低いが、中国では超一級の歴史書として評価が高く、毛沢東は17回も読んだと伝わる。

 それにしても、「古い歴史書から現代の中国がわかるのか?」という疑問が浮かぶ。
 
 
「ビジネススクールではケースと呼ばれる、過去の実例をベースに思考訓練する科目がありますが、資治通鑑は中国に関するケースの缶詰と言えます。確かに中国の近代から現代にかけての大きな歴史的変化は資治通鑑には記述されていません。しかし、共産党幹部の汚職問題、底知れぬ環境破壊、チベットやウイグルの民族問題、身分格差問題などとの類似の事例が資治通鑑には必ずと言っていいほど見つかるのです」(麻生川氏)
 
 
 たとえば、習近平が熱心に進めている「汚職撲滅」が建前にすぎないことは中国人にとっては暗黙知で、誰も汚職が減るとは思っていない。高位についたら賄賂をとるのは当然で「私腹を肥やすことができない官僚は無能だ」とみなされる風潮すらあるという。実際、『資治通鑑』を読むと、汚職撲滅運動を行っても単に役者が次々と入れ替わるだけで、1300余年の歴史書の中で一度も改善されたことがない。本文中では、国家予算並みの大金をつぎ込んで私邸を建築した中唐の代宗時代の宦官を掲出している。

 また、日本人は「正々堂々と戦う」「一生懸命頑張る」という律儀さや誠実さを高く評価するが、中国人は結果を重んじ、勝つことがすべてである。だます、密告するといった行為は珍しいことではない。また、一度や二度負けても捲土重来を期し、自害したりしない。長期戦で勝つことを重視し、しぶとく好機をねらう。

 本書は、中国人の歴史的な思考法を示す事例を『資治通鑑』から抜粋し、現代語訳と原文を併記して解説した本である。
 麻生川氏は、コンピュータのシステムエンジニアとしての経験を生かし、自作の漢文検索ソフトを使って、読み通すのに一生かかると思われた資治通鑑を実質1年で読んだという。
 
 
「本書では、中国人の悪事を数多く取りあげていますが、過酷な歴史を生き抜いてきた彼らの精神構造の本質に、実例ベースで迫れると考えたからです。日本人の想像を超える中国人の戦略的思考とは何かを知ることは、今後の日中関係を考える上でも非常に重要です。結果的に日本人の国際対応力を増すことになればと思っています」(麻生川氏)

 

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