〈8歳から88歳の子供たち〉に捧げる谷川俊太郎の傑作童話集『ワッハ ワッハハイのぼうけん』が初の文庫化!

【担当編集者の新刊おすすめ情報】

 
 大分前に、「学校図書館、これで大丈夫?」という記事を読んで驚いたことがあります。
そこでは「学校図書館に使われる予算が少なかったり、十分な図書が備えられていなかったりする」という文部科学省の調査データを基に、こんな分析をしていたのでした。「学校図書の購入費は、地方交付税として一括して市町村に渡され、交付税の使い道は市町村に任されているため、ほかのものに必要だと判断した場合は、後回しにされてしまいます。よく教育界では『教育予算が橋や道路に化けてしまう』と言われますが、その典型例とも言えます」(ベネッセ 教育情報サイト 2008年5月15日)。
 小中学校の図書館の現状を想像すると、子どもの本離れはこんなところから始まっているのかもしれないと思わざるを得ませんね。
 
 『エーミールと探偵たち』や『飛ぶ教室』『ふたりのロッテ』でおなじみの作家エーリヒ・ケストナーは、〈8歳から88歳の子どもたちに愛された〉と言われたものでした。そんな作家が日本にもいる――ほかならぬ谷川俊太郎という詩人です(そういえばケストナーにも『人生処方詩集』というベストセラーがありました)。日本人の誰もが知っている谷川さんには数多くの絵本や童話があります。彼は全国各地で詩の朗読をしているのですが、母親に連れられた子どももいますから、こんな詩もサービスします。題して「うんこ」。
 
《ごきぶりの うんこは ちいさい/ぞうの うんこは おおきい》と始まって《どんなうつくしいひとの/うんこも くさい//どんなえらいひとも/うんこを する//うんこよ きょうも/げんきに でてこい》と終る実に楽しいひらがな詩。子どもは〈うんこ〉や〈おなら〉は大好きですからね。
 
 そんな谷川俊太郎の童話作品を一冊の文庫に収めたのがこの本――『ワッハ ワッハハイのぼうけん』(小学館)です。〈8歳から88歳の子どもたち〉に捧げる童話集。
 表題作「ワッハ ワッハハイのぼうけん」はこう始まります。
 
《「ワッハ ワッハハイは人間である。/ワッハ ワッハハイは男である/年は五さいより上、十五さいより下である》――物語は展開し始めたと思うとちょん切れ、フィルムを逆回しにしたみたいになったかと思うと、ほんのちょっとの間はすこぶる当り前に続けられ、突然どたばた調になって、また唐突に哲学的問答が挿入される(もちろん全篇に和田誠による色鮮やかな絵がついている)。これすなわち「ナンセンス」なのです。こんな不思議な童話は日本では貴重品です。
 
 一方、冒頭に収録した「けんはへっちゃら」四部作は1960年代~70年代に発表された童話なのにちっとも古くなっていないのです。一見昔風の「生活童話」の顔をしているけれど、「子どもの目の高さ」で書かれた新鮮な作品。四作とも作者と同じ一人っ子が主人公で、都市を舞台にしているのも特色です。それゆえに背後に流れる風景はからっとしてきわめて現代的。なかでも「とおるがとおる」はとんでもない傑作。「ぼく、おおきな白いかみがほしいな」からはじまって「ぼく、おもい石がほしいんだけど」そして「ぼく、いっぺんでいいからしんでみたいなあ」と展開する、ちょっと変わった男の子のお話。びっくりします。
 
 最後の新作「ここからどこかへ」は少年〈ぺったくん〉とおばけのお話。個性的なおばけが続々登場します。〈へやのすみおばけ〉〈電波おばけ〉〈好きですおばけ〉〈もじおばけ〉、そして〈おならおばけ〉――谷川さんには「うんこ」のほかにもユーモアあふれる「おならうた」という傑作もあります。

 

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