10年後好きなことを仕事にして生き残るためには―? 身を守る鎧としての「発信力」!
「30代・幸せな天職」対談(第2回)

 

 『明日クビになっても大丈夫!』(幻冬舎)を上梓したフリーWEBライター・ヨッピーさんと、東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻准教授であり、量子アニーリング研究の第一人者、大関真之さんの対談「【誰でも分かる】「量子力学」ってなんなの? 詳しい人に聞いてきた【入門編】」(i:ENGINEER)は今でも大きなPV数を稼いでいる。今年の2月に発刊された大関さんの著書『先生、それって「量子」の仕業ですか?』(小学館)を出版するきっかけにもなった、この2人の対談が、お互いの著作が発売されたタイミングで再び実現した。 

 

第2回は「発信力が未来を変える!」がテーマ。“異業種”を生きる2人が同意する「サバイバル戦略」とは?

 

大関(敬称略、以下同) ちょっと前に自民党の河野太郎さんが、効率的な研究費の使い方について「研究者の皆様へ意見募集」ってブログで発言したときに、僕ら研究者界隈で話題になって、ブログへのコメントが殺到しました。不満があったけれど言えなかった大勢の研究者たちは、河野さんが発信したことで「言ってもいいんだ」とトリガーがかかったみたいです。つまり大学内部では解決できない問題が山のようにあった。これが閉塞感の正体なわけです。外の動きと連動して解決していかない限り、内部では凝り固まってどうしようもないことばっかりになってしまう。そこで外で、それこそ影響力が絶大だったということもありますが、彼の場合は「やってくれそう」という期待感があったからコメントが殺到したわけです。実際解決に向かって大きな動きがありました。ヨッピーさんの場合もそうで、「彼がこの記事を書いたら面白い」という期待感から意見やコメントが殺到するわけです。それをちゃんと記事にして読者に返しているから、また他の人もついてくるというサイクルができていると思います。

 

ヨッピー それは大関先生のおっしゃるとおりで、河野議員は信用があったからこそ意見が集まったと思います。僕も「頑張って期待に応えよう!」と心がけているので、そこそこ、まあそこそこですけど信用はあるんじゃないかなって。「ヨッピーここ行ってきて」「はい。行ってきたよ」「おっ、やるじゃん」みたいな。

 

―「それは昔から“先生”の仕事だから」という理由で研究者が雑務に追われ研究に集中できないといった事態について、ヨッピーさん「発信力」が解決の一助になると語る。

 

 

ヨッピー 僭越ながら、研究者のかたこそ発信力を持つべきじゃないかなって思ってるんです。発信力って抑止力にもなるじゃないですか。あきらかに不合理で理不尽なことが起きたときに、発信力があれば世に問うことができるので。例えば、なんかめちゃくちゃなこと言ってきた人がいたら、「Twitterに顛末を書くぞ」と言えば、相手は怖がって変なことは言わなくなるじゃないですか。民進党時代の事業仕分けの時なんかも、普段から研究者の方がちゃんと発信してそれが国民に届いていれば、そうそうないがしろにされなかったんじゃないかと思うんですよね。

 

大関 研究者は時間がなさすぎるという現状に問題があるのも一因です。そんなの本来の仕事じゃないでしょって言う人もいます。だけど「そんなこと言ってられない」。本当にやりたいことができなくなってしまう。自分たちがやっていることをしっかりと正しく伝えないと、知らない間に改革が進められてしまって、研究者の実態とかけ離れていってしまうわけです。

 

ヨッピー みんな一生懸命やってるのに、そういうのって悲しいじゃないですか……。研究者がばんばん発信してないと、また同じようなことが起こらないとも限らない。研究者の皆さんで「どんどん発信してこうぜ!」みたいな傾向はまだ見られないですか?

 

大関 教育の観点での話になりますが、僕らは「Twitterをやるな」と言う側です。まあ使うのは学生の自由ですから正確には「下手な使い方をするな」ですね。大学側は明確には言わないけれど、教員に対しては「できればやらないでね」というのが本音でしょう。何か下手な使い方されたら困るでしょうから。

 

ヨッピー でも大関先生Twitterやってるじゃないですか(笑)。

 

大関 やらないとしょうがないんです(笑)。研究者の置かれている状況って「個人商店の店長」みたいなもんですから、店長が物を売るためにTwitterやらないなんてありえないと思います。大学も10年経ったらどうなるか分からないから、そのとき生き残るためにはどうすればいいか。自分で何とかするしかないですよね。だから自分はこういうことができます。こういう新しいことが見つかりました。興味のあるテーマはこれです。こういうこと得意な人いませんか? と自分から仕事を作り出すくらいの勢いで発信しないと。

 

―研究者が古い体制を持つ大学というシステムの中で、准教授→教授とキャリアアップしていく際に、SNSでの発言が障害になりかねない。 

 

大関 教授、准教授などの役職がありますよね。ある人が定年されたりして職が空くと、そこのポジションに入るべき人を募集します。そこで希望者が応募して、その応募者の中から選ばれるのですが、いろんな人たちが集まって選ぶので、自然と問題がない人材を選ぼうとします。そりゃあ時代の流れから目立つ人を採りたい気持ちもあるけれど、一緒に仕事するときに問題がない「協調性」がある人を候補にと考える向きも出てくる。そうすると例えばTwitterで過去にそれこそ炎上などがあった場合は、善し悪しもありますけど、マイナスにはたらくでしょうから、Twitterの利用に慎重になっていくのが自然です。

 

ヨッピー それだと気を遣って発信できない人が増えても仕方ない気がするなぁ。そもそもネットで発信することには向き不向きがあるので「ネットでのプレゼン能力は低いけれど、実際にやってることはすごい」みたいな人が必ずいるはずだから、そういう人を大学側がサポートしてあげてもいいんじゃないかなって。広報担当的な。研究者のかたは研究に専念していただきつつ。

 

大関 あと5年くらいしたら、次第に若い人も増えて、情報発信に慣れている世代が台頭して、風向きは変わると思いますが、5年なんて待てないんです。発信力を持つためにどうしたらいいか代案を立てるべき。発信ということでは、組織には頑張ってほしいです。Twitterのフォロワー数が所属する場所の広報アカウントよりも、研究者個人アカウントのほうがはるかにフォロワー数が多いなんてザラです。そうすると大学側はTwitterの発信力を疑問視して更新がおろそかになり、結局また個人の研究者が頑張るしかなくなる。

 

ヨッピー 発信力で頑張ってる大学といえば、近畿大学のイメージが強いですね。

 

大関 あそこはすごい。本当によくやっています。しかも研究者も結構面白い人を採用しているから、学生からしたら「この学校いい」って思える部分がちゃんとある。

 

ヨッピー 卒業式のゲストに堀江貴文さんを呼んで、それをYouTubeにアップしてすごい再生回数稼いでるんです。逮捕歴がある人だし、普通は躊躇しそうなんですけど。実際にスピーチの内容は堀江さんもすごくいいことをおっしゃってて、話題性もあって学生が興味持ちますよね。

 

―7年務めた商社を辞め、WEBライターに転身したヨッピーさんの場合、好きなことをして商社時代の何倍も給料を稼ぐようになった秘訣は、やはり「発信力」にあるという。

  

 

ヨッピー 「発信力」って強化外骨格みたいなものだなって思うんです。大きな組織を相手に戦うような場面だと、僕一人の力じゃどうしようもないんですが、フォロワーの方々が応援してくれて味方になってくれたらなんとか戦えたりするじゃないですか。

 

大関 自分の後ろに軍隊を抱えているみたいな気分になりますよね。

 

ヨッピー 昔、誰かに「SNSのフォロワーが多いから得だね」って言われたんです。SNSのフォロワーが多いのが得、っていうのが分かってるのなら、自分もフォロワーを増やす努力をするべきじゃないですか。もちろん向き不向きはあるし、「個人的に好きにやってるからこれで良いんだ」っていう人はそれでも良いんですけど、元手やお金がめちゃくちゃかかるようなものでもないですし、大学側も経営とかビジネスっていう視点でやるならもっと一丸になってやりたいようにやればいいと思います。

 

大関 研究者ひとりひとりが頑張っている現状は本当にもったいないです。大学のような組織を変えるとなると、それに同調、強調してくれる理解者が大学内に増えなきゃいけない。

 とある講演会で東北大学のOBの人が話していたことなんですが、研究開発ですごくいい物ができて、それを大量生産するために事業部に持って行ったものの、事業部はその価値をなかなか理解してくれなかった。そこで外の展示会で10数年間、展示を続けてユーザーサイド側から面白い! と認められて、新聞に載ることが出来た。その新聞を見た営業部が「こんなにすごい技術が我が社にあったのか」と10数年越しに声をかけてくれた、という。

 なんだか本末転倒な話ですが、社内の壁が厚く部署ごとの関係が希薄になってしまうと、その壁を取り払うのはすごく面倒なことになる。だから僕たち研究者は「発信力」を持って、外との接点を絶えず持ち続ける必要があります。閉鎖的になってしまった組織を動かす原動力を持つためにも「発信力」を持つことが必要なんです。共同研究を行っている某企業の方々も最初はなんとなく重苦しい印象でした。会社の内部事情を意識した動きをしていたんですね。僕らがやっていることはこんなに面白いんだ! 世の中に向けた動きをして、もっと誇りを持とうと鼓舞し続けたところ、今では積極的に外に向けた考え方をするようになりました。役員に向かって我々の開発した技術のアピールも頑張ってくれて、大きく会社を動かしているようです。やっぱり内向きと外向きの連動が大切です。

 

 

―次回、最終回となる第3回は、今後20年で起こりうる革命的な新技術、これからの社会を考える上で「必要不可欠」になるものをうかがいます。

(12月22日公開予定)

 

購入はこちら

 

 

 

 

小学館
定価本体1,400円+税
発売日:2017/1/30

購入はこちら

 

 

 

 

幻冬社
定価本体1,400円+税
発売日:2017/9/21