【自著を語る】
科学者が綴る「大いなる何か」の存在。
私たちの生きる意味を問う、覚悟の新刊

 

【自著を語る】

 

 「強く願えば、必ず願望は実現する」といった言葉を書籍や雑誌でよく見かける。それが絶望や苦しみの中にいる人を力づけることに異論はないが、この言葉は真実を語ってはいない。心に描いた夢に向かって、日々血の滲むような努力を続けても夢が叶わないことはある。残念ながら、それが現実だ。しかし、だからといって、夢を抱くことを否定しているわけではない。成功するか否かの結果とは関係なく、夢や希望、願いを胸に歩みを進めること自体に、私たちの人生の真の意味があると考えるからだ。

 

 人生において、「成功」は約束されていない。

 しかし、人生において「成長」は約束されている。どんな人にも、必ず、約束されている。だが、そこにはひとつだけ条件がある。それは、逆境やさまざまな困難を「成長の機会」と心に定めることである。その覚悟を深く定めて歩みを進めることができるなら、必ず逆境を乗り越え、一人の人間としてすばらしい成長を遂げることができる。

 

 そうして、困難な出来事を「成長の機会」と捉えるとき、それが「与えられた機会」であるという感覚を抱くことがある。それは特定の宗教の神仏からではない。「人智を超える何か」「大いなる何か」としか言いようがないもの。私たち日本人がかつてよく口にした「お天道様が見ている」の「お天道様」に近いものかも知れない。誰もその正体を知ることなく、それでも日本人の生活に皮膚感覚として溶け込んでいた「何か」だ。

 

 34年前、まだ働き盛りの30代のころ、私は大きな病を得た。突然の余命宣告に、世界が崩れ落ちていくような絶望に襲われた。死の恐怖にさいなまれ、救いを求めてたどり着いた禅寺で、禅師からある衝撃的な一言を受けるまで、私の「価値観の転換」は起こらなかった。しかし、そのたった一言で、人生の真の意味を知ることになったのだ。

 以来、偶然とは思えない不思議な出来事が度々起こるようになった。そして、いつしかあの病も消えていった。

  原子力工学の専門家として科学の道を歩いてきた私にとって、このようなことを明かすのもまた、覚悟を求められる。もとより、洋の東西を問わず人類最大の問いとして長い間議論がなされ、いまだ誰もその答えを知らない「大いなる何か」の正体。しかし、その正体がわからなくとも、ただ「私たちは、良きことを為すために導かれている」ということを深く信じることで、想像を遙かに超える不思議なことが起きるという真実を伝えることは、私の使命だと考えている。

 新刊『すべては導かれている 逆境を越え、人生を拓く 五つの覚悟』では、禅寺での出来事から始まる不思議な体験の数々と、そこから得た、ただひとつの大切なことを書き記した。

 私たちすべての中に、困難を乗り越える不思議な力と叡智が眠っていることを、混乱の一年を締めくくるこの時期に知っていただけたら、私のささやかな覚悟も報われる。

 

 

 

田坂広志 たさか・ひろし

1951年生まれ。74年東京大学工学部卒業、81年同大大学院修了。工学博士(原子力工学)。

現在、多摩大学大学院教授、シンクタンク・ソフィアバンク代表。経営論、仕事論を中心に国内外で80冊余りの著書がある。海外でも旺盛な出版と講演の活動を行っている。

 

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小学館

定価  :本体1,300+税

発売日 :2017/11/28