酒井順子さんがあえて「裏日本」という言葉を使う理由

 

 

 かつては、日本列島の太平洋側を「表日本」、日本海側を「裏日本」と呼んでいました。しかし、1960年代から70年代にかけて、放送局や新聞社が、使用しない方がよい差別用語として、メディアでは使用されなくなりました。

 しかし、その「裏日本」という言葉を、いまあえて使っている作家がいます。

『負け犬の遠吠え』以来、独自の鋭い視点で、ベストセラーエッセイを発表し続けている酒井順子さん(51)だ。

 

 東京出身で、鉄道好き、旅好きでもある作家・酒井順子さんは、日本海側を旅するうちに、高度成長で開発を重ねてきた日本、とくに太平洋ベルト地帯といわれた「表日本」にはない、日本の宝ものとも言えるすばらしい絶景が、そして奥ゆかしいが鋭い光を放つ文化が残っていることを目の当たりにしました。そのとき「裏」という言葉はイメージが悪いと思われているのかもしれないが、「裏」だからこそ、いいものが沢山残ったのではないか。さらには、東日本大震災をきっかけに、経済発展を優先してきたために、私たちは大切なものを失ってきてしまったことに気づき始めているのではないかと、酒井さんは著書『裏が、幸せ。』(小学館)のなかで指摘します。

 

「日本海側が『裏日本』なのだとしたら、そこがほの暗い『裏』であるからこそ、繊細な光が美しく輝くのではあるまいか」(『裏が、幸せ。』より)

 

 派手で明るいことがよしとされてきた、これまでの太平洋中心の価値観に、見事に風穴を開け、「よくぞいってくれた!」と日本海側だけでなく、日本全国で大反響を得ている。

「民藝」「演歌」「美人」「仏教」「文学」「田中角栄」「鉄道」など、酒井さんならではのユニークな切り口で、「裏日本」の魅力を描いたエッセイは、谷崎潤一郎の『陰翳礼賛』以来の痛快な日本文化論といえるのではないだろうか。

 

「控えめだけれど、豊かで強靱な」裏日本の魅力から、現代人にとっての幸せとは何かということまで探っていく本書を読めば、だれもが、「裏日本」に旅に出たくなるはずだ。

 

 

 

 

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小学館

定価  :本体600円+税

発売日 :2018/1/4