3度目の候補でついに直木賞受賞!
門井慶喜が初ノミネート作で描いた「文系の天才」とは

 

 『第158回芥川龍之介賞、直木三十五賞』の受賞作品が今月16日に発表された。SEKAI NO OWARIのSaoriこと藤崎彩織の初小説『ふたご』が直木賞にノミネートされるなど、注目が集まる中、第158回直木三十五賞は『銀河鉄道の父』(講談社)が受賞した。著者の門井慶喜は過去に2度、直木賞候補に選出された著書があり「三度目の正直」とも言える受賞となった。

 

 美術、政治などのミステリーや、歴史小説など幅広いジャンルを得意とする門井慶喜の作品には、たびたび魅力的な「天才」が登場して事件や問題を解決に導く。第153回直木賞候補作にノミネートされた『東京帝大叡古教授』(小学館文庫)は日露戦争後の明治時代を舞台に、東京帝国大学法科大学の宇野辺叡古(ウノベエーコ)教授が難解な事件を次々に解決していく歴史ミステリー小説だ。数学や物理など理系の天才が事件を解決していく物語は数え切れないほどあるが、叡古教授は法律・政治などの社会科学の専門家にも関わらず、語学・文学・史学など人文科学にも通じている、文系の天才である。

 「知の巨人」とも呼ばれ一昨年に84歳で亡くなったイタリアの小説家ウンベルト・エーコを彷彿とさせる叡古教授は、門井慶喜自身が「邦訳されている書籍はすべて目を通している」というほどウンベルト・エーコのファンであることから命名されたという。

 

 本書の語り部・阿蘇藤太は政治家を目指し、叡古教授に弟子入りするため上京してきたが、叡古教授と待ち合わせをしていた大学図書館で叡古教授の同僚教授が殺害された現場に遭遇してしまう。事件の調査にあたる叡古教授と藤太だったが、第2、第3の殺人がおこってしまう。容疑者として浮かび上がったのは、なんと文豪の夏目漱石。そして事件の裏には想像を絶する巨大な「政界の闇」があった。

 

 普通のミステリー小説であれば最大の衝撃は、事件を手引きした黒幕にあるだろう。しかし、本書で1番驚かされたのは「阿蘇藤太」の本名だ。

 ゆくゆくは東京帝国大学への入学を志望している彼にとって、事件現場にいたことが公になれば入学に支障をきたしかねないと懸念した叡古教授が、とっさに与えた名前が「阿蘇藤太」だった。ラストで明らかになる藤太の正体は、近現代を語るうえで超重要人物。事件の鍵を握る夏目漱石、さらには原敬や桂太郎、西園寺公望などの著名人が意外なところで事件に関わっており、近現代史好きなら思わずニヤリとしてしまうだろう。門井慶喜の最初の直木賞ノミネート作で「鳥肌モノのラストの衝撃」を存分に味わっていただきたい。

 

 

 

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書名  :東京帝大叡古教授

著者  :門井慶喜

定価  :本体770円+税

発売日 :2016/4/6

発行  :小学館

 

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