世界800万部超のベストセラー作家が貧困や格差を描く
「社会派ロマンス」

 

 

 平成27年度の厚労省の調べによると、母子家庭はこの25年間で1.5倍に増え、全国で123.8万世帯。その平均年収は181万円で、そのうち全体の57%にあたる非正規雇用者の家庭の平均年収は125万円――。6人に1人の子どもが貧困状態にあると言われ、貧困家庭の問題は年々大きくなっているが、それは実は日本に限った話ではない。中国やインドなどアジア諸国の著しい経済成長の一方で、先進国と言われるアメリカやヨーロッパでも経済格差が深刻化している。特にイギリスの格差は凄まじく、貧困者に無料で食料を配給する「フードバンク」の利用者は2012年以降急激に増えているのだ。

 

 そんなイギリスから生まれた、貧困母子家庭を描く小説『ワン・プラス・ワン(原題:The One Plus One)』(小学館文庫)が話題だ。著者は、映画『世界一キライなあなたに』の原作にして、全世界で800万部超の大ベストセラーとなった『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』のジョジョ・モイーズ。尊厳死をテーマに社会的格差のある男女の恋愛を描き、世界中の女性読者を号泣させたモイーズは、ロンドンのシティ大学院でジャーナリズムを学び、インディペンデント紙で十年間活躍した元ジャーナリスト。その経験を生かした「社会派ロマンス」とも呼べそうな、ユニークな作風で世界中から注目を浴びる存在だ。

 

 最新作『ワン・プラス・ワン』のヒロイン・ジェスは、27歳の極貧シングルマザー。17歳で「できちゃった婚」した夫は精神を病んで2年前から実家に帰っており、数学の天才少女・10歳のタンジーと、夫の連れ子で16歳のゴス系男子リッキーを育て、貧困にあえぎながらも、清掃業とパブ勤めを掛け持ちして日々を凌いでいる。ある日ジェスは、タンジーの学校の教師から数学競技会の参加を薦められる。競技会の成績次第で奨学金が認められ、タンジーに一流校で教育を受けさせてやれるというのだ。期待に胸を膨らませながらも、会場のスコットランドへの旅費すら捻出できず悩むジェス。そんなジェス一家がインサイダー取引容疑で逮捕されそうなIT長者エドと出会い、ひょんなことからタンジーの数学オリンピック出場のためにエドの車で英国縦断をすることに…。

 

 貧困や苛烈ないじめ、家族や恋人との関係、そして犯罪容疑など、それぞれに深刻な問題を抱えた4人プラス、食べて寝てばかりで役立たずの老犬一頭が、次々にトラブルに襲われドタバタの旅をしながら次第に心を通わせそれぞれが変化し、互いが思いやり支え合うようになる――そんな彼らの成長に胸を熱くしたり、ジェスとエドの恋模様にドキドキする一方で、一人親になることや貧困に陥ることなども「自己責任」でかたづけようとする世の中への疑問が浮かんでくる。さらに、血縁もなく階層も違う彼らが互いに補い合い支え合っていく姿に、「本当の家族って何だろう?」と考えさせられもする。

 

 凸凹疑似家族のロードノベルを楽しみながら、気づくと人生や社会にとって大切なことに思いを馳せてしまう――「社会派ロマンス作家」ジョジョ・モイーズの真骨頂とも言える『ワン・プラス・ワン』は、仕事や家庭などうまくいかない日常に悩む日本人の心にも響きそうだ。

 

 

 

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書名  : ワン・プラス・ワン

著者  : 著/ジョジョ・モイーズ  訳/最所篤子

定価  : 本体1,030円+税

発売日 : 2018/2/6

発行  : 小学館

 

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