角田光代、待望の小説集がスゴイ!

 

撮影:三原久明

 

 直木賞をはじめ、あらゆる文学賞を総なめにしている角田光代氏だが、ここ数年は、河出書房新社が刊行中である「日本文学全集」のなかの『源氏物語』の現代語訳にとりかかっていて、小説を書くことを封印している。昨年9月に、上巻が刊行され、今年は中巻、来年に下巻が出る予定だが、その翻訳作業は膨大なもので、自ら仕事場に缶詰になることを繰り返しているそうだ。角田光代ファンとしては、『源氏物語』を角田氏がどう料理してくれるのかに大きな興味があるだろうし、実際上巻は、発売直後に重版が出るほど好調な売れ行きである。

 しかし、「そろそろ角田光代の小説が読みたい!」と欲求不満がたまっているであろう読者も多いのではないだろうか。そこで、1996年~2008年にかけて書かれた角田氏の傑作短篇をまとめた小説集『私はあなたの記憶のなかに』(小学館)が刊行された。

 角田氏によると、この時期を「ひとり千本ノック時代」と呼んでいるそうだ。小説家として大成するために、野球の千本ノックのように、とにかく書いて書いて書きまくる。自らを厳しく律して、小説を書きまくっていたのだそうだ。そしてそれは、2005年『対岸の彼女』の直木賞受賞に結実した。「短篇小説をたくさん書くことで、確実に小説が上手くなる」。角田さんを尊敬している、『サラバ!』で直木賞を受賞した西加奈子氏も、角田さんのこの教えに大いに刺激されたそうだ。

 この小説集には、8つの物語が収録されている。

「さがさないで。私はあなたの記憶のなかに消えます。」という書き置きをのこして姿を消した妻を探して、記憶をたどる旅に出た夫を描く表題作、大学生、人妻、夫、元恋人などさまざまな男女の過去と現在が織りなす携帯メールの物語「地上発、宇宙経由」など、愛と記憶、過去と現在が交錯し、多彩で技巧をこらした物語ばかり。まさに角田ワールド全開で、これまで角田光代の小説に触れてこなかった人が読んでも心が震えるであろう小説ばかりである。

 3月10日の、TBS系『王様のブランチ』でも、角田光代氏の作家人生と『私はあなたの記憶のなかに』が特集された。円熟期を迎え、のりにのっている角田光代の新刊は、小説ファンをうならせてくれること間違いなしと言っていいのではないだろうか。

 

 

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書名  : 私はあなたの記憶のなかに

著者  : 角田光代

定価  : 本体1,500円+税

発売日 : 2018/02/26

発行  : 小学館

 

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