欧米諸国の侵略を許さず、明治維新に導いた佐賀藩主を描く傑作長編

【担当編集者の新刊おすすめ情報】

 

 

 「薩長土肥」という言葉があります。明治維新を推し進めた薩摩・長州・土佐・肥前の四つの藩のことですが、肥前すなわち佐賀藩がどんな働きをしていたのか、教科書などでもあまり紹介されてきませんでした。

 植松三十里さんの『かちがらす 幕末を読みきった男』は、佐賀藩の幕末維新の中心人物となった藩主・鍋島直正を描いた歴史小説です。本書を読むと、佐賀における直正の存在がいかに大きかったか、そして幕末から明治維新に掛けての佐賀藩の役割がいかに大きかったかがわかります。

 本書発刊後に行われたシンポジウムの基調講演で、著者の植松さんは鍋島直正の功績を次の七つにまとめられていました。

 

 1:藩政改革

 2:長崎での警備の充実

 3:種痘の普及

 4:反射炉など技術開発

 5:人材育成

 6:隠居後の中央進出

 7:北海道開発

 

 若くして藩主となった直正に、まず立ちふさがったのは藩の財政難でした。しかも、城が火事で焼けるという事態に陥りますが、そこから藩政改革に手を付けていきます。

 西洋の科学技術に強い関心を持っていた直正は、種痘を知っていち早く率先して嫡男・淳一郎に行うことで、藩内に広まるきっかけを作りました。

 長崎警備を福岡藩とともに任されていた直正は、外国船の侵入が増え、中国がアヘン戦争でイギリスに敗れたことで危機感を覚えていました。欧米に伍する軍事力を備えるために、最新の科学技術の研究・実用化を、幕府よりも先駆けて行います。耐火煉瓦の開発、それを使った反射炉の建設、鉄の鋳造、鉄製大砲の製造、蒸気船の建造といった事業に取り組み、幾多の失敗を経てそれは成し遂げられます。その最新の軍事力は、幕府側と倒幕派双方から恐れられ求められましたが、あえて一線を画しました。

 藩主を16歳の直大に譲って隠居した直正は、江戸や京都に出向き、〈日本を外国列強の属国にしない〉〈幕府側と倒幕派との内乱を回避する――そのために武器は使用しない〉という思いを、伝えていきます。そして欧米諸国が開国を迫り、攘夷を叫ぶ諸藩が戦火を交える中、体調を崩しながら、直正は将軍慶喜との会見に臨むのです。その行動力は、亡くなる直前まで続きました。

 江川坦庵、島津斉彬、井伊直弼、勝海舟、田中久重、江藤新平……。歴史を飾る名だたる人物と交流し、そして、有為な人材を多数育てた人物でもありました。

 直正は情感溢れる人物として描かれており、本書の中には何度も感動的なシーンが登場します。大名という立場故に奥方の死に立ち会えない哀しみ、開明派として気脈を通じていた人々が先に死んでしまう苦悩、技術開発に立ち向かう部下と最後に分かち合った喜び、徳川慶喜と腹を割って話をし、最後に堪えた涙……。

 本書は、「佐賀新聞」に昨年から今年の初めまで連載された「かちがらす」に加筆改稿しました。発売直後から佐賀県では爆発的な売れ行きとなり、早速重版が決まりました。

 これまで、その業績があまり知られていなかった人物に光を当てた、本格歴史小説です。

 

 

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書名  : かちがらす 幕末を読みきった男

著者  : 植松三十里

定価  : 本体1,750円+税

発売日 : 2018/02/22

発行  : 小学館

 

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