『池上彰の世界の見方 朝鮮半島』日本はどう付き合うべきか

 

 

 北朝鮮の平昌(ピョンチャン)五輪参加を機に朝鮮半島をめぐる動きが急展開している。4月には10年半ぶりに南北首脳会談が行われ、核のない朝鮮半島を共同目標とすること、朝鮮戦争の終戦と平和条約の締結を目指すことなどを盛り込んだ「板門店宣言」を発表した。この会談のあと、実現すれば史上初となる米朝首脳会談の中身についての憶測が、連日メディアを賑わせている。

 

 一連の対話ムードは概ね歓迎されているが、新聞各紙は北朝鮮の非核化について懐疑的な見方も多い。だが、日々国際情勢と向き合っている記者はともかく、一般の多くの人は、70年近く前の朝鮮戦争がまだ終わっていない事実を忘れているし、なぜ北朝鮮の非核化が疑わしいのか理由がよくわからないだろう。

 

 太平洋戦争に日本が負けたあと、朝鮮戦争が勃発。朝鮮半島が分断され、北朝鮮と大韓民国が誕生した。この両国の戦後史を日本人は学校で学ばずにきた。日韓に横たわる慰安婦や竹島の問題、日本にとっても脅威となる北朝鮮の核開発は、そもそも何が原因だったのか?

 

 ニュースを理解するには、その背後にある歴史を学ばなければならないと常々口にしているのがニュース解説でおなじみの池上彰氏だ。本書は池上氏が中高生相手に行った授業をまとめたシリーズの第6弾である(今回の授業は東京都立西高校有志を対象に行われた)。朝鮮半島の戦後史のツボを押さえてコンパクトに振り返る。そして、慰安婦や竹島、北朝鮮の核開発など諸問題の発端・経緯を丁寧に説明している。

 

 北朝鮮と韓国は、独立戦争によって自らの力で国を勝ち取ったのではなく、日本が戦争に負けたので国ができたという思いがどこかにある。そこで両国とも日本を打ち破って我々が国をつくったんだ、という「建国神話」が必要だった、と池上氏は解説する。韓国はその憲法の前文に「建国神話」が記されている。その神話によれば、韓国は日本の支配に反対する人々の運動から始まった大韓民国臨時政府の正統性を受け継いでいる国である。それがフィクションであることを池上氏は解き明かすのだが、韓国においては反日が憲法の基本精神なのである。だから慰安婦問題にしても「日本と交渉しないのは憲法違反である」という裁判所の判断が出ている。韓国政府は無理筋だとわかっていても従わざるをえないのだ。

 

 北朝鮮については、朝鮮半島の北部を支配下におさめたいソ連が、ソ連軍の中につくっていた朝鮮人部隊の大尉だった金成柱(キムソンジュ)を、伝説的な抗日の英雄「キムイルソン将軍」に仕立てて送り込んだ、という驚きの建国神話が語られる。金日成がどうやって絶対的権力を持つようになり、その地位が世襲されることになったか、小説のような事実も明かされる。また、なぜ他国の人たちを拉致したのか? 核開発へ踏み出したきっかけも、語られる。

 

 両国の戦後史を学ぶと、北朝鮮にも、韓国にも、それなりの理由と論理が存在していることがわかる。それを池上氏は「内在的論理」と言う。韓国の人たちは、なぜ反日なんだろうか。北朝鮮はなぜ国際社会に楯突くように核開発をしてきたのか。まずは、その国の立場に立って考えてみようじゃないか、ということだ。困った隣人がいるからといって、日本という国がどこかに引っ越すことはできない。困った隣人とどう付き合っていくか。その答えを見つけるための歴史をフェアに教えてくれる本である。

 

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書名  : 池上彰の世界の見方 朝鮮半島 日本はどう付き合うべきか

著者  : 池上彰

定価  : 本体1400円+税

発売日 : 2018/04/16

発行  : 小学館

 

 

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