自著を語る5
わたなべまこ@築地市場ドットコム
『いちご だんめん図鑑』
2018.9

 

いちごの断面は可愛い

 私の仕事は、築地市場の食品通販サイトのデザイナーです。商品をウェブ上で紹介していくのが主な仕事ですが、日々の作業の中で、野菜や果物にこんなにも多くの品種が存在するのか! と仕事を始めた当初、大変衝撃を受けました。そして、それぞれに特徴や特性があることを知り、この面白さをなんとか世の中に伝えたい、何かよい手段はないものか……と考えていたちょうどその頃、私は会社名義のTwitterの“中の人”を担当することになりました。
 ウェブの商品ページでは真面目な内容を盛り込んでいるので、Twitterでは商品の裏話であったり、生産者さんの思いであったり、あるいは、職場のある築地市場の落とし物掲示板情報など、自由気ままにつぶやいてみました。すると、私にとっては何も珍しくない内容なのに、フォロワーさんからは「初めて知りました」とか、「ビックリしました」という感想が届くようになったのです。築地市場にマグロやしいたけが落ちているのは、我々にとっては何も珍しいことではありません。でも、築地市場で働いていない人=知らない人にとっては、それは非日常であり、とても面白いことのようなのです。
 そこで、Twitterであればそういった何かコアな面白さを伝えることができるのではないかと、空いた時間を使って作成したある果物の断面図カタログを公開したところ、私が“中の人”になってから一番多くの「いいね」がつきました。それは、りんごの品種別断面図カタログ。世の中の人は、意外と品種の違いに興味を持っているのでは? と思った私は、調子に乗って、その後も柑橘、ぶどう、桃など様々な断面図カタログを作成し、Twitterで公開していたのです。そして、最も反響が大きかったのが、今回図鑑になったいちご。「いいね」やリツイートの数は他の比ではありません。その数、五万件以上。断トツなのです。
 なぜいちごはこんなにも多くの人に愛されるのか。私なりに色々と考えてみました。まず、いちごは赤くて丸くて可愛い。見た目(外皮)も可愛いが、断面はさらに可愛い。可愛いものは(特に日本では)幅広く愛され、いちごを嫌いという人は少ないと思います。そして、いちごはとりわけご当地性が高い。調べてみると、いちごは四十七都道府県まんべんなく品種登録がされています。恐らく、果肉が傷みやすく輸送性に優れていないため、地元で消費されることが多いからではないでしょうか。品種名もその土地にちなんでいることが多いので、愛着が湧きやすいのかもしれません。どこでどんな品種が栽培されているかは、ぜひこの図鑑巻末の「いちごの産地日本地図」を見ながら楽しんでください。
 さて、「いちご断面図」のTwitterでの反響は私の予想をはるかに上回り、気がつけばテレビや雑誌などでも取り上げられ、最終的には、このようなミニ図鑑として出版されました。
 いちごの断面図だけの図鑑。前代未聞である……。こんなマニアックな図鑑、いったい誰が読むのかと心配しましたが、どうやらいちごを愛する多くの方々が手にとってくださっているようです。やはり、いちごの可愛さは絶大です。
『いちごだんめん図鑑』には四十二品種しか掲載できませんでした。けれど、日本のいちごの品種はとても多く、また、新品種も次々と登場しています。今後も私はいちごの断面図の捕獲を続けていきたいと思っています。

 

 


『いちご だんめん図鑑』
わたなべまこ@築地市場ドットコム・作 
定価:本体900円+税
小学館・刊
A24取 48ページ
大好評発売中
ISBN 978-4-09-726794-2

 
 
 

 
 
 
 

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