私の編集した本
『フェルメール原寸美術館
100% VERMEER!』
千足伸行監修
編集担当 後藤淳美(小学館 文化事業室)
2018.11

 

原寸大で
フェルメール!

 フェルメールの絵は概して小さい。三十五点余りとされる全作品のうち、半数以上は縦の寸法が四十~五十センチ前後またはそれ以下である。それは、フェルメールの絵が教会や宮殿を装飾するものではなく、多くは一般の市民の家に掛けられたものであるからだといわれる。
 この絵のサイズは、『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』という本書の形態にうってつけであった。この本は若冲(じゃくちゅう)北斎(ほくさい)、ゴッホに続く、原寸大の図版を中心に構成する「100%シリーズ」の四冊目で、一ページのサイズはA4、見開きでA3の画集である。フェルメールの場合、描かれている人物の主要部分はこのサイズに(おおむ)ね収まるので、『真珠の耳飾りの少女』の愛らしい表情や、『牛乳を注ぐ女』の作業する手元など、それぞれの絵の魅力的な部分を原寸大で紹介することができる。


 本書では三十五点の作品を、フェルメールの絵を知る上でキーワードとなる六つのテーマに分け、まず作品全体を美しい図版で紹介、さらに鑑賞のポイントとなる部分の原寸大の図版とわかりやすい解説を掲載した。作品によっては、150%、200%といった原寸以上に拡大した図版で詳しく紹介したが、これも繊細な描写や色彩の表現を鑑賞するのにちょうどいい大きさに仕上がった。テーマは「青と黄色のハーモニー」「光に満ちた輝く白」「揺れる恋心」「笑う人々」「音楽のある日常」「オランダの繁栄」の六つで、色彩、人物の感情、モチーフに焦点を当てた。本書を眺めるだけで「フェルメールらしさとは何か」がわかる仕掛けになっている。
 フェルメールの絵には、リュートやヴァージナルといった楽器や手紙、地図、おなじみの真珠をはじめ、東方貿易でもたらされた小物、そして多くの画中画(絵の中に描かれた絵画)が登場する。細部に目をこらすと、小さい絵の中にさまざまなモチーフが描かれているのがわかる。
 ページをめくりながら原寸大の図版を眺めていると、鮮やかな色彩と共にそれらが次々と目に飛び込んできてフェルメールの世界に引き込まれる。それが実に楽しい。フェルメールのファンにはたまらなく幸せな時間だ。ちなみに、特に小さい三点の絵は、本書の一ページの中にすっぽりと収まるので、絵全体を原寸大で鑑賞できるようになっている。
 通常、画集や図録には作品の寸法が明記されているが、この数字から絵の大きさを想像するのは難しい。実際に作品を目の前にして、「こんなに大きな絵だったのか」と驚くこともしばしばある。本書は、作品の一部分とはいえ、すべてに原寸図版を掲載しているので、実際の大きさをイメージする手がかりにもなるだろう。
 10月5日より、フェルメールの作品が九点も来日する、国内最大規模の「フェルメール展」が東京で開催されている(来春、大阪に巡回予定)。『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』で絵と解説をチェックしてから展覧会に行けば、さらに楽しめること間違いなしである。あらかじめ原寸図版をじっくり眺めておくと、実物を鑑賞するときに見落としがちな細部に目を向けることができるだろう。また、フェルメールが画面に何を描き込んだのか、そのモチーフをどんな意図で選んだのか、何を意味するのか。絵の背景を知っておくことで、実際に作品と向き合ったときにその魅力をより深く味わえるかもしれない。ぜひ、この本を手にとってフェルメールの世界に心ゆくまで浸っていただければと思う。

 

『フェルメール原寸美術館
100% VERMEER!』
千足伸行/監修 
定価:本体3,000円+税
小学館・刊
A4判 200ページ
大好評発売中
ISBN 978-4-09-682275-3

 
 
 

 
 
 
 

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