大学の図書館で発見された拓本

 私が山形大学に勤務していた2011年(平成23)7月、大学の図書館の書庫で、石碑の拓本を2点発見した。そのうちの1点が、以前に紹介した「物部守屋大連之碑」というものである。そしてもう1点は、広開土王碑の拓本であった。


 発見された2点の拓本はいずれも軸装されていて、巻かれた状態になっていた。巻かれた状態では、どのような内容の拓本かはわからなかったのだが、2点のうちの1点が、横幅が1.8メートルほどある巨大なものだった。これほど大きな拓本は、ひょっとしたら広開土王碑の拓本ではないか、と直感した。


 はやる気持ちを抑えて開けてみると、はたしてそれは広開土王碑の拓本だった。周りにいた職員の方に、「よく見ただけでわかりましたね」と驚かれたが、授業で何度も取りあげたことのあったことが幸いして、すぐにわかったのである。発見された拓本は、4面のうちの、第3面部分の拓本であった。


広開土王碑拓本(山形大学蔵)


 私はその時、初めて広開土王碑の拓本の実物を目の当たりにし、その大きさに圧倒された。と同時に、広開土王碑が持つなんともいえぬ力強さに、すっかり魅了されてしまった。


 冷静になってから、いくつもの疑問がわいてきた。そもそも、なぜ広開土王碑の拓本が、大学の図書館に眠っていたのか。いったい誰が、この拓本をもたらしたのだろうか。