日本の陸森は、どうなっているか

日本の森林は世界でも珍しい存在だってことをご存知か?。日本列島は、「温帯雨林」という特異な環境にある。熱帯の雨林じゃなく温帯雨林。あまり聞き慣れない用語だろうけど、温帯でこれだけ多くの雨が降る環境にあるのは、世界的に少ない。日本以外だと、カナダ西海岸やオーストラリアの一部ぐらいしかない。

例えば、オーストラリアの「ゴンドワナ多雨林」「タスマニア原生地域」などは世界遺産に登録されているほどで、僕らにとって見慣れた日本の陸森は、世界的に見ると非常に貴重な多雨の環境にあるのだ。日本列島自体が、本来なら世界遺産レベルだ。

肥沃な温帯雨林は、非常に豊かな生物多様性を誇っていた。だから、人が暮らしやすい。しかし、人がいるために伐採や開発で温帯雨林の原生林はほとんど姿を消してしまう。世界のすべての原生林のうち、温帯雨林の原生林は今や3%しかない。

日本では、というか世界中で、かつては木が燃料だった。太古の昔から第2次大戦前ぐらいまでそうだった。木の燃料とは、薪や木炭のこと。特に家庭で日々使う燃料が木だったから、日本の陸森は江戸時代の方が今より面積が少なかった。葛飾北斎や安藤(歌川)広重らが描いた浮世絵は、よく見ると禿げ山だらけである。

林野庁の資料でも、日本の森林面積は、明治時代より今の方が広い。森の栄養が海を育てているとすれば、森林面積が広くなれば海は豊かになるはず。でも、そうじゃない。その謎を解く鍵のひとつは、1950年代半ばから70年代半ばにかけての高度成長期だった。

高度成長期、日本人は急速に豊かになり住宅の建設ラッシュが始まった。日本の住宅は木材で作るのが伝統だ。需要に追いつかない材木供給のため「拡大造林」とよばれる植林が国策で行われた。ところがその頃、石油やガスへの燃料革命も同時に起こった。

拡大造林とエネルギー革命、それが急激な変化を日本列島に起こした。人によって起こった「大変」だ。住宅建材にしやすいスギやヒノキといった針葉樹が全国津々浦々に植樹され、それまで燃料だった広葉樹の価値が急激に下がった。広葉樹を伐採して、本来の植生を無視した造林が行われた。その拡大造林によって、日本は世界でも類を見ない陸森大国になった。

拡大造林から半世紀が過ぎた。大きく植生が変化した陸森が、今の列島を覆っている。その植生の変化による悪い影響が、今になって海に現れていると考える研究者は多い。今こそ、植生を変化させた木々を伐採する時。これも復興へのヒントである。

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