イタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」

イタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」の店内様子

店に掲げられた3枚の巨大な黒板(左上)。その日の仕入れによってメニューが変わるので、黒板は毎日書き換えられる。

世界にただひとつのイタリアンを食の都・庄内で食す

山形県櫛引町(現・鶴岡市)の郊外に、地場イタリアンの看板を掲げた店がオープンしたのは2000年3月のこと。使われなくなったドライブインを改装しただけの、国道沿いにポツンと佇むこの店が、数年ののち、これほど注目を集める店になるとは、いったい誰が予想しただろう。

アル・ケッチァーノ外観

壁塗りなど、できるところは自分たちで施したという「アル・ケッチァーノ」。

「アル・ケッチァーノ」という店の名は、いかにもイタリア料理店らしい響きであるが、 「庄内地方では『あるのよねえ』を『あるけっちゃのお』と言うんです。庄内にはうまいものがたくさんあるのよねえ、そんな意味です」とオーナーシェフの奥田政行さん。

奥田さんが作り出す料理の特徴をひと言で例えるならば、シンプルという言葉に尽きる。

「庄内は“日本一の食の都”と誇れるほど良質な食材に恵まれています。食材そのものが美味しいので余計な手を加える必要がなく、素材本来の味を楽しんでもらうために、私はほんの少し、お手伝いをするだけなのです」。奥田さんは決まってそう話す。

見たことも聞いたこともない食材が、パスタやピザの具となって供されることもある。味を想像することが全くできないときもあるが、その巧みな組み合わせに誰もが驚かされる。調味料は塩とオリーブオイルだけという料理が多い。塩だけのときもある。そんな料理が続いても決して飽きることがないのは、食材によって塩やオイルを使い分けるから。大胆でありながらとても繊細なシェフ奥田の妙技に魅せられ、次の一皿への期待感もどんどん膨らんでいくのである。

オーナーシェフ・奥田政行さん

オーナーシェフ・奥田政行さん。スローフード協会国際本部が主催する、世界食のコミュニティ会議「テッラ・マードレ2006」で世界の料理人1000人に選出。(子供の頃の遊び場だった海を背に)

庄内平野の心癒される風景

店の裏手には庄内平野が続く。とても長閑な、心癒される風景である。

「主役は、庄内の食材とそれを作り出す生産者です」

「店の半径 40km以内から手に入れる食材がほとんどです」と奥田さん。それは店内に飾られた3枚の巨大な黒板が物語っている。吹浦産の天然岩ガキ、月山の天然キノコ、庄内牛など地域の特産品に加え、井上さんのスーパー小松菜、丸山さんの羊など、生産者個人の名を冠した食材も多い。まさに地産地消を地で行く地方レストランは、今や全国各地から客足の絶えない店となった。時には本場イタリアやフランスからも客が訪れ、庄内の食材が主役の料理を堪能し、感嘆するのだという。

2007年7月にはアル・ケッチァーノのとなりにカフェとドルチェがメインの「イル・ケッチァーノ」がオープンした。「アの次はイだから」と奥田さんはいたずらっ子のように笑ったが、店名には「要る」という意味も込められている。ショーケースはいつも、地元の果物をふんだんに使用した、季節感溢れるドルチェで彩られている。

「料理を作れるのは生産者のおかげ。主役はあくまで庄内の食材です」。そうして創り出された世界でただひとつのイタリアンを、今日も多くの人々が堪能することだろう。

カキのモロヘイヤソース

秋田県境も近い、遊佐町吹浦地区の天然岩ガキを用いた「カキのモロヘイヤソース」は夏場限定のスペシャリテ。

赤ネギとハタハタ

晩秋から冬のメニュー「赤ネギとハタハタ」。赤ネギは酒田市平田地区に江戸時代から続くといわれる在来野菜。

羊とアスパラ

「羊とアスパラ」。奥田さん絶賛の、だだちゃ豆を食べて育った羊肉。新鮮なアスパラガスとの組み合わせも絶妙。

取材・文/川野達子 撮影/長谷川 潤

アル・ケッチァーノ

住所 山形県鶴岡市下山添一里塚83
アクセス JR羽越本線鶴岡駅よりタクシーで約15分
TEL 0235・78・7230
主なメニューと
価格帯
おまかせ3,300円〜
総席数 32席
営業時間 11:45〜ラストオーダー14:00 18:00時〜ラストオーダー21:00
定休日 月曜(ほか不定休あり)
クレジットカード
ホームページ http://www.ques.co.jp/alchecciano/
アクセス 地図はこちら
備考 駐車場15台