第3回  日本の少子化問題、待ったなし?(後編)

 
 ■フランスの子育て支援政策に学ぶ
 
 さて、今回は、日本の少子化をどうするかという本題に迫ります。
 出生率そのものを上げるための方法は、いろいろ考えられます。
 例えば、1993年まで日本と同じく出生率が低下していたフランスは、政府の積極的な子育て支援政策によって出生率を回復させ、2010年には2%超に達しました。
 その政策は「産めば産むほど有利なシステム」です。一部を紹介すると、こんな感じです。

○2人以上の子どもを養育する家庭には、所得制限なしで家族手当を支給
○子育て世帯の所得税は減税。特に3人以上の子どもを育てている世帯は大幅減税になる
○子どもを3人以上育てると、年金が10%加算
○出産費用の他、産前産後の検診費なども無料。不妊治療も43歳までは公費で行われる

 その他、育児休業は3年間もとれますし、父親も有給で出産休暇がとれます。
 子育て世帯にとって負担が大きい教育費も、フランスでは、ほとんどかかりません。
 高校までの学費は無料。公立大学の学費も、手数料などわずかな費用のみで、ほぼ無料。
 子育て支援だけでなく、フランスではそもそも「週に35時間以上働いてはいけない」という法律が、各企業でしっかり遵守されています。
 また、1年に5週間もの有給休暇が法律で定められるなど、休みがとりやすい労働環境です。

 では、日本はどうでしょう? 
 国立大学の授業料は年間54万円もかかります(しかも、14年後の2031年度にはさらにアップして93万円程度になるという試算を文科省が発表。騒ぎになってから「あくまで試算」と撤回しましたが)。そのうえ、入学料も28万円かかります。

 働く時間に関しては、やはり企業によっては時間外労働が非常に長いという現状があります。
 2016年10月に厚労省が発表した「過労死等防止対策白書」では、1カ月間の残業時間が「過労死ライン」の80時間を超えた正社員がいる企業は、22.7%にも上るそうです。
 サービス残業などを考えると、これも氷山の一角かもしれません。
 
 こうした現状を考えてみると、日本の皆さんがなぜ子どもを産まないのか、よくわかります。
 それは、長時間労働で忙しいからであり、子どもにかかる費用が高いからです。
 つまり、社会全体が「子ども大歓迎」の姿勢になっていないということです。

 
 ■日本人が選ぶのは、どのコース?
 
 では、日本がフランスに学んで少子化対策をするとしたら、どんな制度が考えられるでしょうか。
 例えば、第3子以降の家庭には家賃補助をするとか、ファミリーカーの購入時に補助金を出す、電車に子連れ専用車両をつくる、3人以上の子どもを育てる親は年間20日以上の休暇がとれるという法律をつくる、奨学金制度を改善する……など、さまざまなものが考えられますね。
 また、きちんと休暇を消化している社員でなければ出世させられないという法律をつくり、それを遵守しない企業には罰則を付けるとか。 
 2030年までに出生率を2.0以上にするには、それくらい大胆に考えなければダメでしょう。
 
 でも、とても大事なことですが、こうした政策を進めるためには、お金がかかります。
 今の日本の財源のままでは、子育てや教育に関する支出を増やすことは、たぶん不可能です。
 
 フランスの消費税は、19.6%(ただし、食料品や医療品などは別)。
 所得税や住民税、社会保険料も、日本に比べて高額です。
 福祉制度が充実し、高いサービスを受けられる北欧諸国では、さらに高い税金がかかります。
 日本人も、政策を充実させて子育てしやすい国にするなら、もっと税金を払わなくてはいけません。
 
 もちろん、人口減少は自然な流れとして、このまま抵抗せずに受け入れる道もあるでしょう。
 その場合、労働人口はどんどん減っていくわけですが、その対策もないわけではありません。
 例えば、「国民は全員、75歳まで引退禁止!」という法律をつくる。
 また、子どもが減って余った学校を老人ホームに改造して、月4万円程度で暮らせるようにする。
 何より大事なことは、日本は経済大国ではなく、小国になってもいいと、国民が覚悟することです。
 
 なぜなら、人口が減少していく中で、経済大国であり続けるのは大変だから。
 今、日本のGDP(国内総生産)は世界3位ですが、さらに10年経てば、もっと下がるはずです。
 でも、スイスやデンマークのように、総GDPがそれほど高くなくても、一人当たりGDPが高く、福祉制度がしっかりしている国もあります。
 国民の幸福度がとても高い国もあります。
 結局、その国の人々にとって幸せとは何か、そして日本人は何を選ぶのか、という問題なんですね。
 
 北欧のように、政府に高税を収めて、高いサービスを求める「高税・高サービス型」を選ぶのか。
 あるいは、自己負担、自己責任をメインにした「低税・低サービス型」を選ぶのか。
 低税低サービス型の場合は、たとえ飢死する老人がいても、国として切り捨てることになります。
 少子高齢化は問題だと叫びながら、結局、今までのように中途半端なままでいく道もあります。
 
 日本は、どの道を選んでもいい。大事なことは、日本の皆さんが自分で決めるということです。
 
 ■子どもは必要不可欠な社会資本という認識
  
 それから、日本は他の先進国と比べて養子が非常に少ないという面も指摘しておきたいと思います。
 さまざまな事情から、親元で育つことのできない子どもを他人が育てる養子縁組は、海外では珍しくありません。
 でも、血縁が重視される日本で、政府は養子縁組には本格的に取り組んできませんでした。
 現在4万人以上いる要保護児童のうち、養子として引き取られている子どもは、わずか1%程度。
 一方に子どもが欲しいという大人がいて、一方に育ててもらいたい子どもがいるのだから、しっかりした審査の後に養子縁組が遂行されれば、双方が幸せになるはずだと思うのです。
 また、国内だけでなく、貧しい国の子どもを養子として引き取るという選択があってもいい。
 6組に1組の夫婦が不妊に悩む日本で、もっと多様な家族の形があっていいと、僕は思います。
 もちろん、臓器売買や人身売買、虐待などは厳しく取り締まりをした上で、制度を見直せばいい。
 そんなふうに、法改正をするだけで子どもの数を増やせることもあります。

 人口が減り続ける日本の社会にとって、子どもはもはや、必要不可欠な資本です。
 親世代が投資する負担よりも、子ども世代が返してくれる社会的利益の方がずっと大きいのです。
 多くの日本人が、子どもは社会資本だと捉えるようになれば、政策も変わってくることでしょう。
  
 そして、日本の社会は、物事が決まれば全国画一的に、しかも高水準で成し遂げる力があります。
 教育レベルも道徳レベルも高いし、フランスより組織力も強い。言語的な問題もありません。
 国民一人一人が少子化対策は急務だと認識すれば、フランスよりうまくいく可能性もあるのです。  

 南アジアの人々の、子どもに対する温かさ。それは昔の日本人も持っていたものかもしれません。
 その温かさを、今の日本にもぜひ取り戻してほしい。
 少子化問題も、社会全体で取り組めば、日本人は必ず解決できるはず。
 僕はそう考えています。